No.481
2004年7月12日
「労働基本権保障の具体的要求」を政府に提出
= 全労連「公務員制度改革」闘争本部が行革推進事務局に申し入れ =
 全労連「公務員制度改革」闘争本部は8日、政府・行革推進事務局に対して「公務員労働者の当面の労働基本権保障の具体的要求」を提出しました。
 「具体的要求」は、昨年から学者・弁護士もまじえたプロジェクトチームによる集中した議論を経て取りまとめられたもので、2度のILO勧告という新たな情勢もふまえて、公務員労働者の労働基本権回復にむけた当面する要求を明らかにしています(別掲資料参照)。
 闘争本部は、行革推進事務局の松田事務局長に対して、「具体的要求」にもとづく誠実な交渉・協議を申し入れました。

「予断を持たず議論する立場に変わりない」と見解を表明

 この日の申し入れには、全労連「公務員制度改革」闘争本部から、坂内本部長、岩田事務局長、若井事務局次長ほかが参加し、行革推進事務局は、松田事務局長、公務員制度等改革推進室の磯部室長、出合次長ほかが対応しました。
 坂内本部長は、新たに着任した松田事務局長に「経済や政治をめぐる情勢が大変ななかで、行革推進事務局長という重責を担って活躍いただくことに敬意を表する」とあいさつの言葉をのべたうえ、「全労連として公務員制度課題を重視し、闘争本部を設置して運動をすすめてきたが、引き続き、行革推進事務局との対応をよろしくお願いする。6月のILO総会でも、日本政府代表は、政府と関係者の真剣な話し合いが重要であると発言しているが、そのことからも、率直で友好的な協議の場を要請する」として、全労連闘争本部との誠意ある交渉・協議を求めました。
 また、全労連の「公務員労働者の当面の労働基本権保障の具体的要求」にかかわって、岩田事務局長は、「いろいろな角度から公務員制度の議論が必要だが、そのなかでも労働基本権の回復にむけた話し合いは重要だ。本日、提出した『具体的要求』も、その俎上にのせて議論ができるよう要請する」と申し入れました。
 岩田事務局長は、出合次長に対して、「具体的要求」の趣旨や、要求を取りまとめた背景などについて概要を説明したうえ、「要求は、2度のILO勧告をふまえつつ、最小限で、かつ具体的なものとして取りまとめた。日本の公務員労働者の権利水準がアジアをはじめ世界的にも影響を与えている。改革するならば、ILOの国際的な労働基準をふまえた観点が必要だ。それがなければ、日本政府は国際的にも批判されることになる。そうした点も重視したうえ、公務員労働者の労働基本権回復にむけて議論をすすめるため、全労連の要求に対しての真摯な検討を求めたい」と要請しました。
 出合次長は、「うけたまわった。前回の局長交渉でもお話はうかがったところだ。労働基本権は、非常に難しい課題であり、50年以上にわたっていろいろな経過をたどってここまで来ている。行革推進事務局としては、予断を持たず議論する立場に変わりない」との見解がのべられました。
 また、岩田事務局長は、「関係大臣と連合との『政労協議』が5月から開始されるもと、前回の交渉では、連合との差異のない対応を求めたが、6月のILO総会の政府代表発言もふまえ、一刻も早くその実現を求める」と重ねて申し入れました。

以 上

【資料】

公務員労働者の当面の労働基本権保障の具体的要求

全国労働組合総連合

1、団結権について
(1)団結権については、現行法で保障されている公務員労働者はもとより、消防職員、監獄職員にも保障するものとする。
(2)組合員の範囲は、団結自治の原則にもとづいて、労働組合が自主的に決定することとする。
(3)法人格の取得については、労働組合およびその連合体は、登記することによって法人格を取得することとし、登記要件は、労働組合の自主性およびその運営、活動を規制するものであってはならないものとする。現行の登録制度は廃止する。
(4)便宜供与については、労働組合の代表者に勤務時間の内外を問わず、その任務の迅速かつ能率的な遂行に必要な便宜を供与する。労働組合は、その団結と活動の必要性から、在籍のまま必要な期間、組合業務に専念することができることとする。
(5)不当労働行為は禁止規定を明文化する。組合員であること、労働組合の正当な活動を行ったことを理由とする解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない。使用者たる当局は、正当な理由無く団体交渉を拒否してはならない。労働組合は、公的機関からの完全な独立を享受し、その結成、運営、活動に対する公的機関からの支配・介入に対して十分な保護を受けるものとする。

2、団体交渉権について
(1)国家公務員、地方公務員に労働協約締結権をふくむ団体交渉権を保障することとする。労働条件は、労使対等の原則にもとづき、団体交渉によって決定する。
(2)雇用、賃金、労働条件にかかわる事項は、すべて交渉の対象とすることができるものとする。
(3)団体交渉の当事者は、労働組合の各級機関とそれに対応する当局とする。地方公務員等の連合体についても、中央段階での交渉制度を確立する。
(4)労働条件事項について、公務員労働者に労働協約締結権を保障する。当事者は協約を遵守し、誠実に履行する義務を負う。
(5)労働協約が、法律や条例の制定または予算上の新たな措置が必要な場合は、当局は必要な措置を議会に付議しなければならない。それが議決されたとき、協約は締結時にさかのぼって効力を有する。

3、争議権について
(1)争議権は、「国家の名において権限を行使する公務員」以外については、これを保障する。
(2)これにともなって、非現業国家公務員の「あおりそそのかし行為」の禁止規定を撤廃し、同行為に対する罰則規定を廃する。また、労働組合の正当な争議行為を理由とした損害賠償を請求することはできない。
 なお、労働関係調整法が規定する公共業務にかかわる公務員労働者についても、同法を適用する。

4、代償措置について
(1)労働協約締結権、争議権が制約されている労働者に必要な代償措置として、「当事者があらゆる段階で参加することができ、その裁定が全面的かつ速やかに実施される適切・公平・迅速な調停仲裁手続き」が保障されるものとする。
(2)そのため、労使間の紛争解決にあたるとともに、不当労働行為の救済などを行う中立・公平な三者構成の機関を設置する。そのことにともない、現行の人事院勧告制度の勤務条件に関する勧告については廃止し、人事院を試験、任免、身分保障、研修などをおこなう中央人事行政機関に再編する。
以 上