No.456
2004年3月18日
◆トップページへ ◆私たちの運動ページへ

民間のベアゼロ追随、きわめて不満な回答

= 2004年春闘要求で政府・人事院と最終交渉 =
 公務労組連絡会は18日、2004年春闘要求に対する最終回答を求めて、総務省・人事院と交渉しました。
 民間ではトヨタをはじめ大手組合がのきなみベアゼロで妥結するもと、最終交渉では、前回からの交渉に続いて、公務員賃金の社会的な影響力もふまえて、民間賃金に追従するのではなく、不況打開も視野に入れた積極的な政策判断を強く求めました。
 しかし、「官民較差にもとづき、適正な公務員給与の水準確保」(人事院)、「人事院勧告制度を維持尊重」(総務省)とする、従来の枠を一歩も出ないきわめて不満な回答にとどまりました。

人事院「現行方式は賃金引き下げへのハドメだ」と強弁

 15時からの人事院との交渉は、公務労組連絡会からは、石元議長、若井事務局長、黒田事務局次長、松本(自治労連)、新堰(全教)各幹事と、国公労連から山本中執が参加、人事院は、勤務条件局給与第一課の幸(ゆき)課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、石元議長は、「昨日、民間大手組合の回答が出されたが、膨大な利益をあげているもとでのベアゼロ回答に労働者の怒りをかっている。こうしたなかで、人事院との最終交渉をむかえた。要求に対する誠実な回答をいただきたい」とのべ、回答を求めました。
 幸課長補佐は、以下のとおり回答を示しました。
【人事院最終回答】
1、官民較差に基づき、適正な公務員給与の水準を確保するという人事院の基本姿勢に変わりはない。
2、公務員の給与改定については、民間給与の実態を正確に把握した上で適切に対処する。
3、給与勧告作業に当たっては、較差の配分、手当のあり方などについてみなさんと十分な意見交換を行うとともに、要求を反映するよう努める。
 寒冷地手当の見直しに当たっては、みなさんの意見を十分聞きつつ、検討を進める。
 退職時の特別昇給制度の見直しについては、みなさんの意見を聞きつつ、早急に結論を得る。
 公務員の給与制度見直しおよび地域における公務員給与のあり方については、みなさんの意見を十分ききつつ、検討をすすめる。
4、一時金については、民間の支給水準等の正確な把握を行い、適正に対処する。
5、公務員の勤務時間・休暇制度の充実にむけて、関係者の意見を聞きながら引き続き検討をすすめる。
 超過勤務の縮減については、育児・介護を行う職員の上限規制、目安時間を中心とする指針などの実施状況を踏まえつつ、一層の縮減にむけて努力する。
 民間における育児・介護休業制度改正の動向を踏まえ、公務においても、速やかに必要な改正に向けた検討を行う。
6、多様な勤務形態の検討に当たっては、研究会の検討状況を踏まえ、関係機関と連携を取りつつ、みなさんの意見を十分聞き具体的な検討をすすめる。
7、「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」に基づく施策が着実に実行されるよう努める。
 また、これまでの交渉における公務労組連絡会の追及点にかかわって、幸課長補佐は、「職員の生活への配慮をすべきとの意見だが、官民較差にもとづき、民間並みの収入を確保することが、『世間並み』の生活水準につながる。公務員賃金の影響の大きさは認識しているが、景気対策等は政府や国会で議論すべきであり、人事院として、そこまで考慮して対応することは適当ではない。モニター制度などでは、公務員の給与が高すぎるとの意見があるなか、国民の理解を得るには、現行の賃金決定方式が適当であり、そのことは、さらなる引き下げへのハドメともなっている」などとのべつつ、「民間では、一時金が昨年を上回る回答が出ており、そうした動向を注目したい」と回答を補足しました。

地域に影響しても寒冷地手当はあくまで見直す

 これに対して、若井事務局長は、「民間大手の妥結状況に今の回答を照らし合わせると、ゼロまたはマイナスという結論しか出てこない。個別的労働関係がすすむ民間賃金と公務員賃金とは制度や構造が違っており、単純に水準で比較すれば、昨年と同様にマイナスとなる。改善しようという意欲がまったく見られない。居直りの回答だ」ときびしく指摘しました。
 また、松本幹事は、「約3千の地方自治体の4割が人事委員会勧告とは別に独自の賃金カットをしている。勧告は、決して賃下げのハドメなどにはなっていない。こうした実態に対して、人事院はきちんと意見を言うべき。また、寒冷地手当の削減が、地方交付税に影響することは、総務省も認めている。手当改悪は、地方財政を圧迫することを十分に認識せよ」とのべ、新堰幹事は、「教員給与の現行の水準を確保するため、人事院として何ができるか前向きに検討してほしい。中央人事行政機関としての役割発揮が必要だ」と求めました。
 幸課長補佐は、「人事委員会勧告は、労働基本権制約の代償措置であり、それを自治体が尊重しないのは遺憾だが、財政難など各自治体で個別の事情があるうえ、人事院としては、地方自治体の問題に言及する立場にない。寒冷地手当見直しが地方にも波及することは承知している。しかし、交付税が減るからと言って、手当の見直しをやらないのはいかがなものか」などとし、あくまで寒冷地手当の改悪作業をすすめる態度を示しました。
 若井事務局長は、「公務員労働者の労働基本権を制約している以上、職員が安んじて職務を遂行できるようにするのが人事院の役割だ。民間準拠だけで賃金を決定するならば、人事院は調査機関に過ぎない。労使対等の交渉ができるよう制度の整備をはかれ」と求め、労働基本権制約のもとで賃下げが強行される不当性を指摘しました。
 最後に、石元議長が、「本日受けた回答は、要求に照らしてきわめて不満なものだ。今後、勧告にむけてさらに議論をつみあげていきたい」とのべ、交渉を閉じました。

2年連続の本俸マイナスでも「勧告制度の尊重」崩さず

 18時すぎからの総務省との交渉は、公務労組連絡会からは、石元議長、若井事務局長、黒田事務局次長、柴田(自治労連)、新堰(全教)の各幹事、国公労連から山本中執が参加、総務省は、人事・恩給局総務課の伊藤総括課長補佐、山石課長補佐ほかが対応しました。
 石元議長は、「前回までの交渉の到達点をふまえて、使用者としての誠意ある回答を示していただきたい」と回答を求めると、伊藤総括補佐は、「提出された要求書については、非常にきびしい民間の経済状況や国の財政事情など、公務員の給与等を取りまくきびしい環境をもふまえ、種々検討を行ってきた」としたうえ、以下の回答を示しました。
【総務省最終回答】
1、(給与改定について)人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり、同制度を維持尊重することが政府としての基本姿勢である。
 平成16年度の給与改定については、この基本姿勢の下、国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処する。
 なお、一昨年11月の衆参両院総務委員会附帯決議の趣旨を尊重して、職員団体とも十分に話し合い、理解と納得を得られるよう努めてまいりたい。
 国家公務員の給与水準については、人事院勧告制度尊重の基本姿勢の下、これまで同様に適切な給与水準が確保できるよう努力していく。
 また、国家公務員の給与については、誤解に基づく議論等に対して毅然として対応し、正確な情報提供に努める等により、国民の理解が正しく得られるよう、一層努力する。
2、(ILO条約について)政府としては、従来よりILO条約尊重の基本姿勢をとってきたところである。また、ILO条約の批准について職員団体が強い関心を持っていることは十分認織している。
 なお、ILO結社の自由委員会第329、331次報告に対しては、関係機関と相談しつつ、誠実に対応する。
3 、(労働時間の短縮について)労働時間の短縮については、昨年改定した「国家公務員の労働時間短縮対策」に基づき、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用の促進に努める。
4、(公務の高齢対策の推進について)公務員の高齢者雇用については、再任用に関する実施状況を把握しつつ、再任用の上限年齢が62歳になることを踏まえ、その円滑な運用と定着に向けて、政府全体として必要な対応を進める。
 今後とも、公務員の高齢者雇用の推進については、民間の動向の把握を図るとともに、職員団体の意見を聞きつつ取り組んでまいりたい。
5、(男女共同参画社会の実現について)男女共同参画社会の実現に向け、「男女共同参画基本計画」(平成12年12月閣議決定)に基づき、関係機関とも連携をとりつつ、女性国家公務員の採用・登用の促進や職業生活と家庭生活の両立支援の充実等に着実に取り組む。
 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定を促進するとともに、仕事と子育ての両立のための積極的な支援策が講じられるよう適切に対応する。
6、(安定した労使関係の維持について)安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話し合いによる一層の意思疎通に努めたい。

職員が職務に専念できるよう使用者として努力する

 伊藤総括補佐は、「回答としては、以上のとおりだが、前々回前回と議論させていただいたとおり、使用者として、職員が安んじて職務に専念できるよう、適切な給与水準の設定に努めたいという気持ちを込めた回答であることをとくに申し上げたい」とのべました。
 これに対して若井事務局長は、「この間の交渉では、勧告制度尊重だけでは使用者としての責任を果たしていないと繰り返し指摘してきた。そのことは、共通の認識になったはずだ。『気持ちを込めた』としても、その中身がこれまでどおりでは、誠意が見られない」とのべ、従来どおりの「人勧尊重」とする回答をきびしく追及しました。
 伊藤総括補佐は、「前回、前々回の交渉における議論の到達点をふまえた回答と受けとめてもらいたい。これまでの議論の積み重ねを無にする考えはない」とあらためてのべ、使用者として責任ある対応をしていくことを表明しました。
 また、若井事務局長は、「ILO条約を尊重するのなら、2度の勧告にもとづいて、労働組合との交渉・協議に政府として誠意を持って応じるべきだ。行革推進事務局は、担当大臣との交渉に応じようとしていない。また、高齢者対策は、民間では65歳までの再雇用をすすめているときに、再任用の上限年齢を62歳にとどめるのではなく、65歳まで延長するよう検討すべき」と求めました。
 伊藤総括補佐は、「ILO勧告にかかわる話し合いについては、総務省として応えられる部分についてはきちんと対応していきたい。政府として、みなさんの要望はうけたまわった」と回答しました。
 最後に石元議長は、「民間の中小はこれからが春闘本番をむかえるが、公務・民間を問わず、賃金や労働条件の改善の要求は切実だ。そうした要求の実現にむけて、なおいっそう交渉・協議を深めていきたい」とのべ、交渉を終えました。
以 上