No.407
2003年7月23日
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国民本位の民主的財政の確立めざして
= 公務労組連絡会と公務3単産が各府省へ申し入れ =
 公務労組連絡会は、国民本位の民主的財政実現を求めて、各省への要請行動にとりくみました。この行動は、8月末の各府省の概算要求決定にむけて、毎年、自治労連・全教・国公労連の3単産と共同でとりくまれているもので、総務省・財務省・経済財政諮問会議・厚生労働省・文部科学省に申し入れしました。
 とりわけ、今年は、小泉内閣が、国と地方の「三位一体の改革」の推進をねらうもと、国庫補助負担金や地方交付税の削減など、地方切り捨ての予算を許さないことが求められています。各省要請でもその点を強調して申し入れました。
 要請行動には、公務労組連絡会事務局と3単産の代表が参加しました。
   総務省・財務省
地方交付税制度の堅持など地方財政の充実を強く求める
 7月17日午前の要請行動では、総務省と財務省に申し入れました。
 総務省では、人事・恩給局総務課の柴沼長補佐、河野参事官補佐、自治財政局交付税課の西川係長、同財政課の内村係長らが対応しました。
 はじめに、要請の趣旨を伝え、「申し入れ書」のなかの主に地方自治体にかかわる課題にしぼって見解をただしました。
 「三位一体の改革」ともかかわる地方交付税制度については、「地方自治にとって不可欠な制度であり、維持していきたい。小規模自治体への交付税を減額する考えはない。必要なら増額していく」とし、また、今国会で法律が成立した地方独立行政法人は、「『法人化』という新しい選択肢を自治体に提供したものであり、この制度をどのように活用し、法人化をすすめるかは、それぞれの自治体の判断だ。総務省として、地方自治体に法人化を強制することはない」と、見解が示されました。
 また、緊急に求められる不況打開、地域経済を守る課題では、地場産業支援のための予算措置、さらには、消費税減税、課税見直しなどが重要となっていますが、「町づくり支援や福祉の推進など、自治体への間接的な支援をすすめていく」とのべるにとどまりました。
 参加者は、全国的に公平なサービスがうけられるためにも地方交付税制度のいっそうの拡充を求めるとともに、「30人学級」がこの2年間で9県から30県にひろがっていることを示し、教育予算の国庫補助負担金の削減をやめることなど、今後の予算編成にあたって、地方への財政の充実を強く求めました。
 また、引き続く財務省への申し入では、主計局の古田主査が対応しました。
 参加者は、「過疎化がすすむもと、地域経済の活性化や、環境保全など国土を守る方策が必要だ。長野県のような『脱ダム宣言』を国全体にひろげるべき。大型公共事業中心の予算を考え直す時期にきている。財務省として、大きな視点からの議論を求めたい」「公務員賃金の切り下げは、民間賃金や地域経済にも影響を与える。賃金改善にむけて、必要な予算措置をおこなうべき」などと申し入れました。
 古田主査は、「現在、各省が概算要求の策定をすすめている時期であり、財務省としては、それを受けて編成作業をすすめ、例年どおりのスケジュールですすめば、年末に政府予算案が決定する。したがって、現時点では、とくにコメントできるものはないが、みなさんの申し入れの内容は、必要なところには伝えたい」とのべました。
 こうした見解もふまえ、今後、予算編成時期などで財務省との意見交換の必要性も指摘し、申し入れを終えました。
    経済財政諮問会議
「骨太の方針」をめぐって事務局の見解をただす
 18日午前には、「骨太の方針」(第3弾)を取りまとめた経済財政諮問会議事務局(内閣府)に対して申し入れを行いました。
 対応した内閣府生活統括官付の野村参事官補佐、大森政策企画専門職からは、「申し入れ書」への見解がのべられ、「来年度の予算編成にむけて、経済財政諮問会議で議論がはじまったところだ。各省の概算要求が取りまとめられたのち、11月に諮問会議であらためて基本方針を決める」としつつ、「国庫負担金の4兆円の削減が『骨太の方針』で示されており、それを来年度予算のなかでどう具体化していくかが課題だ。医療・福祉分野の民間参入は政府内にもいろいろ意見があるが、雇用拡大の面から、企業参入方式を考えていないことはない。中小企業金融機関などの特殊法人のあり方は、中期的な検討が必要だ。民間が本来やるべき分野だが、しばらくは、セーフティネットとしての役割はあり、政府系金融機関のとりくみを支援していく」など、各項目にわたって回答が示されました。
 また、消費税にかかわって、「小泉総理が、首相在任中の引き上げをしないと公約している。ただし、金が必要な場合の財源をどうするかは考える必要がある」と回答しました。
 これに対して参加者は、「きびしい時代だからこそ、安心でき、将来に希望が持てる予算が必要だ。しかし、『骨太の方針』からは、そうした観点や、どんな日本をつくるのかという理念も見えてこない。企業参入を全面的に否定しないが、国民生活擁護の面から、民間にまかせてはいけない部分がある。緻密な議論が必要だ」「不況で退学が増え、授業料の減免件数も増えているもとで、教育現場への企業参入は反対する」「改革や変化が善で、現状維持を悪とする姿勢では理念がない。政府の方針には疑問を感じる」などと指摘しました。
 担当官は、「主張はわかるが、経済財政諮問会議は、『改革にかけたい』という総理の意思をどう具体化するのかを考えている」などとし、小泉「構造改革」推進の立場を強調しました。
 最後に要請団は、「『改革』は、国民には激痛となる。机上の議論にならず、現実を見据えて地に足をつけた議論を求める」とのべて要請を終えました。
   厚生労働省・文部科学省
日本の将来をになう青年・子どもを守る予算を
 22日午前の厚生労働省への申し入れでは、職業安定局、雇用均等・児童家庭局、職業能力開発局、医政局などから10名の担当官が出席し、項目ごとに詳細に回答が示されました。
 しかし、その内容は、保育の拡充への「新エンゼルプラン」「待機児童ゼロ作戦」、また、雇用促進にむけた「若者自立挑戦プラン」「若年層トライアル雇用」「ヤングワークプラザ」など、耳障りのいい言葉がならべられる一方で、「少子高齢化がすすむもとで、将来にわたって安定的な制度をつくるため、社会保障制度改革を推進する」とのべるなど、基本的には医療・年金など社会保障制度の改悪をいっそうすすめる立場が貫かれています。
 これに対して、参加者は、「高齢化は自然現象だが、少子化は社会現象だ。それを避けがたいとするのではなく、どう脱却するのかを議論すべきだ。国民のニーズに応えるため、社会保障の根本をふまえて検討すべき」「雇い主が給料を払わないアルバイトの高校生もいる。フリーターは使い捨てだ。青年の雇用促進計画は重要だが、権利や健康を守ることなどもふくめた検討が必要だ」などの点を指摘しました。
 最後に、「厚生労働行政は、日本の将来にかかわる部門だ。予算から出発せず、人間らしく暮らし、働くためにはどうすればいいのかを考えることから出発すべきだ。都市・過疎地を問わず、日本全国どこでも一様に医療や福祉サービスを受けられることも重要だ。将来を担う省として、来年度の予算編成にあたって、毅然とした対応を要望する」とのべて申し入れを締めくくりました。
 引き続く文部科学省への申し入れでも、財務課、大学課、学生課、私学部、児童生徒課、施設助成課など10名を超える担当官が対応しました。
 教育の拡充にむけた関連予算の充実、義務教育国庫負担制度の堅持、学校施設・設備の改善、私学助成、大学の学問・研究の自由と自治の保障などを中心に申し入れましたが、これに対して、「義務教育国庫負担制度の『根幹』は、今後とも堅持する。私立学校の重要な役割をふまえ、財政状況はきびしいが、私学助成の充実にむけて検討する」「国立大学法人化は、大学の活性化をはかることが目的だ。大学の人事は自主的に決定され、研究も自主方針だ。自主・自立が保障されており、それは、国会の附帯決議でも確認された」「奨学金制度は、教育ローンと趣旨が異なるものであり、日本育英会の独立行政法人化後も、奨学金の『精神』をいかす」などの回答が示されました。
 参加者は、「教育の原理が経済の論理に圧倒されている。『根幹』を堅持すると言うが、国庫負担制度が『三位一体の改革』の目玉に据えられていることに文科省としてどのように対応していくのか」「大学法人化は、国会審議でも、政府は、12万人の職員を『非公務員型』にする明らかな法的根拠を示すことができなかった。労使間の交渉どころか、職員に説明しただけというやり方は認められない」などの点を指摘し、見解を求めました。
 文科省側は、「国庫負担制度の交付金化の話は出ているが、それでは義務教育の水準が保てないと考えている。来年度中に結論を出すために、今年の概算要求では、通常どおり予算要求し、今後、財務省・総務省とともに対応を検討する」とし、法人化での労使間交渉の問題は、「人事課に伝える」として回答を避けました。
以 上