No.401
2003年7月8日
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権利制約の「代償措置」として生活改善はかれ
= 中央行動を前に公務労組連絡会が人事院と交渉 =
 第2次中央行動を翌日にひかえた8日、公務労組連絡会は、夏季重点要求にかかわって、人事院と交渉しました。
 この交渉は、6月10日の要求書提出以降、はじめての交渉となるもので、石元議長を先頭にした交渉団は、人事院勧告にむけて、賃金改善や労働時間短縮など切実な要求の実現をせまりました。
賃金・労働条件の改善にむけて人事院の見解をただす
 交渉には、公務労組連絡会からは、石元議長、若井事務局長、黒田事務局次長、松本(自治労連)、新堰(全教)、先水(国公労連)の各幹事が参加、人事院側は、勤務条件局給与第1課の幸清聡課長補佐、職員課の酒井元康課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、石元議長は、@4年連続で年収が減り、昨年、本俸までも引き下げられる事態のもとで、公務労働者の賃金改善の要求は切実であり、労働基本権制約の「代償措置」としての役割を果たして、生活と労働の実態、公務労組連絡会の要求にもとづき勧告をおこなえ、A「マイナス勧告」の影響は、民間をふくめた広範な労働者、国民生活に影響をおよぼしているもとで、単に「民間準拠」にとどまらず、国民生活とのかかわりから、人事院勧告のあるべき姿を検討すべき、B小泉内閣の「構造改革」にもとづき、民間企業でリストラ・賃下げが横行しているもとで、労使交渉で決められるべき賃金の本質がゆがめられており、そうした実態を「民間準拠」で公務労働者に押し付けることは認められない、との3点を強調し、人事院の見解をただしました。

 幸課長補佐は、賃金にかかわって、要旨、以下のとおり回答しました。
●本俸マイナスのもとで、みなさんの要求の切実さや、重みは認識している。民間企業は、引き続ききびしい状況にあり、大企業でもベアなしや定期昇給カットがおこなわれ、各機関の調査でも、昨年よりさらに低い数字が出ている。現在、こうした給与実態の調査結果を整理・集計している段階だが、正確な民間給与の把握につとめ、国民の理解と納得をふまえながら検討作業をすすめたい。
●マイナスの勧告が多くの人たちに影響することは十分認識している。ただし「情勢適用の原則」があるもとで、マイナスであっても適切に対処する必要がある。それが国民の理解にもつながる。人事院として各方面の意見を聞いているが、理解をえられているものと思う。懸念する声や、国会での附帯決議はあるが、一方では、「公務員はめぐまれている」とのきびしい意見もふまえた対応が必要だ。
●民間の賃金決定の「ゆがんだ実態」について指摘はあったが、公務員賃金には市場原理が働かないもとで、現行の官民比較方式による給与水準は、「世間相場」として納得がえられていると考える。

 また、勤務時間などにかかわって、酒井課長補佐が以下のとおり回答しました。
●超過勤務縮減は重要課題であり、人事院としては指針にもとづき、各府省に対して努力を求めてきた。縮減への対策はすすんでいるが、各府省担当者で構成する「超過勤務縮減対策連絡会議」に協力し、今後とも、啓蒙や指導につとめていきたい。
●長時間勤務の解消にむけて、昨年の年次報告では、管理者による適正な勤務時間管理の必要性を指摘したところだが、引き続き、「連絡会議」などの場でお願いし、各府省と連携をとって改善にむけて努力する。
●介護休暇や、妊婦の超過勤務制限について、昨年から請求要件を緩和するなど、取得を促進している。今後、取得状況にかかわる実態調査をすすめたい。
●休暇制度は、情勢適用の原則にもとづいて対応をすすめ、みなさんの要求もふまえつつ、民間の動向に注視していきたい。
●非常勤職員の勤務条件改善については、民間企業における処遇や身分保障の実態をふまえて検討をはかる。休暇制度などは、常勤職員とは条件が異なることもあり、同一に扱うことは困難だ。
●男女平等の課題では、セクハラ防止にむけて、平成11年には人事院規則を制定してきたが、研修や防止週間をつくって啓蒙・啓発に務めていきたい。
「民間準拠」に固執する人事院の姿勢をきびしく追及
 これらの回答をふまえ、若井事務局長は、「今の回答を聞いた限りでは、今年もまたマイナスということしか伝わってこない。労働基本権制約の『代償措置』として人事院の存在の基盤があり、権利が奪われている公務員労働者の生活を守ることが役割ではないのか。少なくとも、その意思は伝わってこない」とのべ、「民間準拠」に終始する人事院の姿勢をきびしく追及しました。
 幸課長補佐は、「勧告は、公務員に労働基本権があればどうなるかという点も考慮に入れている。勤務条件を良くしたいと考えてはいるが、官民の比較が基本であり、現行制度を変えることは考えがたい」などとし、同様の回答を繰り返しました。
 これに対して、若井事務局長は、「果たして、公正なルールのもとで民間賃金が決定されているのか。産業再生法は、リストラすれば法人税をまけてやるという法律だ。『国策』でリストラや賃金が下げられ、その賃金にもとづいて人事院がマイナスの勧告を出すのなら、政府と人事院のマッチポンプと疑われてもしかたがない。人事院勧告の今日的なあるべき姿を考える時が来ている」と指摘しました。
 交渉参加者からは、標準生計費にかかわる問題点などが指摘されるとともに、「国民の声を聞いているというならば、現場の労働者・労働組合の意見を聞いているのか」と、初の本俸マイナスのもとで、民間職場にもひろがっている怒りの声に耳を傾けるべきなどとの追及がつづきました。
 若井事務局長は、交渉を取りまとめて、「公務員労働者が安んじて仕事ができるよう、『代償措置』としての人事院の役割と責務を真剣に考えるべき。750万人にとどまらない民間労働者・国民の生活への波及、地域経済の疲弊など影響の大きさをあらためて認識したうえでの勧告作業を求める。また、民間では賃下げでも労使協議にもとづくものだ。労使でどのような合意をつくっていくのかについても十分な検討を求めたい」とのべました。
 最後に、石元議長が、「賃金改善の署名をすすめているが、公務員賃金は民間に影響するとの認識がひろがっている。ILO勧告でも労使間の意味のある交渉・協議を指摘しているように、今後、公務労組連絡会との十分な話し合いを求める。そのうえで、勧告前のしかるべき時期に、あらためて誠意を持って回答を示してもらいたい」とのべ、交渉をしめくくりました。
以 上