No.390
2003年4月15日
公務労組連絡会FAXニュース
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退職手当改悪法案を衆院で採択
=高級官僚の高額な退職金、「天下り」禁止に議論が集中=
 第156回通常国会に提出されていた国家公務員退職手当「改正」法案は、15日の衆議院総務委員会で審議され、共産・社民を除く各党の賛成多数により採択されました。
 6/100ポイントもの退職手当削減によって、国家公務員の生活が直撃されるばかりか、民間にも影響を与える今回の法案は、国会での十分な審議が求められていましたが、与党が質問時間を「放棄」するもとで、わずか2時間の審議で採決が強行されました。
 公務労組連絡会は、委員会への傍聴行動にとりくみ、4単産から13名が参加しました。
「天下り官僚」の渡り歩きの実態をきびしく追及
 総務委員会の審議には、仙谷由人、山田敏雅、大出彰(以上、民主)、黄川田徹(自由)、矢島恒夫(共産)、重野安正(社民)の各議員が質問に立ちました。
 委員会審議では、高級官僚の法外な退職金や「天下り」問題、特殊法人や独立行政法人を渡り歩く実態に対して、各議員から質問が集中しました。
 民主党の山田議員は、「天下り官僚が特殊法人や独立行政法人を渡り歩くことを禁止する通達があるが、特殊法人の子会社はこの通達にあてはまらない。実際に、石油公団を退職し、90歳までその子会社を渡り歩き、そのたびに高額な退職金を手にした役員もいる」との事実も示し、よりきびしい規制を求めました。
 これに対して、「公務員制度改革の一環として、子会社への就職についても、徹底して公表するルールを昨年から開始した」(行革推進事務局・春田公務員制度室長)と答弁すると、山田議員は「いくら公表するといっても、実際は自由にできる。そのことをどう考えるかが重要だ」と、国民の批判の声に応える仕組みづくりを強く求めました。
 また、大出議員も、官僚の「天下り」の実態を明らかにした週刊誌の記事をもとにして、実際の退職手当の金額や、再就職先を明らかにするよう求めました。しかし、「金額は本人のプライバシーにかかわることであり、さしひかえたい。また、退職後の再就職先は関知していない」(厚生労働省・鈴木審議官)と無責任な答弁をしたため、「何が個人のプライバシーだ。退職金が国民の税金から出ている限り、明らかにすべきだ。退職後は関知しないとは何ごとか。答弁し直せ」と強く求め、それでも政府側がまともに答えようとしなかったことから、委員会審議がストップする場面もありました。
 大出議員は、「再就職のルールづくりこそ必要だ。官僚の渡り歩きを禁止すべき」と求めると、片山大臣は、「その方向になりつつある。ただし、いっぺんにはやれないので、徐々に見直していく。その一歩として、今回の退職手当改正で二重取りを禁止した。息の長い見方をしてほしい」などと答弁し、退職手当の「改正」が、高級官僚優遇の抜本的な見直しではないことを暗に認めざるをえませんでした。
 自由党の黄川田議員は、地方公務員の退職手当にかかわって質問し、「地方公共団体の退職手当は、条例で決めることとなっているが、総務省としてどのように対応するのか」とただすと、「各団体の条例で支給額を決めるが。地方公務員法第24条の均衡の原則があり、国に準じて適切な措置を速やかに実施することとなる」と答弁し、地方公務員の退職手当への直接の影響を明らかにしました。
高額な退職金に「民間とくらべればまあまあ」
 共産党の矢島議員は、「外務省不祥事で退任した3人の元次官の退職金は9500万円から8900万円、BSE問題で退職した前次官も8900万円近い。高額退職金は国民のきびしい批判の対象だ。今回、一部是正したと言ってもきわめて不十分だ。また、『官民比較による均衡』としてきたにもかかわらず、公務員の指定職は、民間企業役員との比較調査すらやっていない。これこそきちんとやるべきではないのか」と政府を追及しました。
 片山大臣は、「改正によって、次官クラスで1100万円の削減となる。民間とくらべればまあまあではないか」などと答弁し、「企業役員の実態調査をしようと思っても、民間は本当のことを言わない。それに、重役になる前に退職金をもらう場合もあって、なかなか難しい」としながらも、「今後の検討課題だ」と答弁しました。
 さらに、労働組合との交渉にかかわって、矢島議員は、「政府も、退職手当の性格は、勤続報償、生活保障、賃金後払いの要素が不可分に混合しているとのべてきた。賃金後払いとしての性格がふくまれているならば、勤務条件にかかわる問題であり、それならば、昨年11月のILO勧告も示している『労働組合との意味のある対話』、つまり、労使交渉による決定が必要だったのではないか」と追及しました。
 片山大臣は、「基本は勤務報償だ。勤務条件ではないと考えるが、労働組合の意見交換は十分にすべきだ」とのべたことに対して、「それでは、労働組合との意見交換や対話はどの程度すすんでいるのか」と矢島議員がただすと、「退職手当の検討の過程では、労働組合から要求のあった経過措置を受けいれた。公務員制度改革については、大きな課題であり、100%納得はえられないかもしれないが、合意を得るよう努力すべきだ」と答弁しました。
 最後に質問に立った社民党の重野議員は、「今回の改訂で退職金の二重取りがなくなるというが、国から特殊法人や独立行政法人に出向した場合、国に復帰せずに役員にとどまったほうが退職金が多くなる場合もある。つまり、天下りを禁止しない限り、国民の批判に応えることにはならない」と問題点を指摘しました。
 総務省久山人事・恩給局長は、「そうしたことがないように法人の規定整備を検討している」とし、片山総務大臣は、「法人に行きっぱなしではなく、国に帰ってもらい、そのうえで二重取りさせないことが今回の法改正の趣旨だ」とし、「天下り」禁止の求めに対しては答弁を避けました。
 約2時間の質疑ののち、最後に、共産党の春名直章議員が反対討論に立ち、「高級官僚への高額退職金に対する措置はきわめて不十分。国民のきびしい批判に応えるにはほど遠い内容だ。また、退職手当の引き下率6%は、本俸2%引き下げと合わせると8%を超える引き下げとなり、一般公務員の家計や生涯設計に与える影響が大きい。高級官僚の特権的待遇を温存し、一般公務員に犠牲を強いる法案には反対する」と主張しました。
 しかし、その後の採決では、共産・社民が反対、その他の各党が賛成し、法案は採択されました。
 退職手当改悪法案は、17日の衆議院本会議で審議される見込みとなっています。
 参議院に送られた場合にも、公務労組連絡会として、傍聴行動にとりくみ、引き続き法案審議への監視を強めていきます。
以 上