No.386
2003年3月18日
公務労組連絡会FAXニュース
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従来の域を出ず きわめて不満な回答
= 公務労組連絡会が政府・人事院と最終交渉 =
 公務労組連絡会は18日、総務省・人事院と2003年春闘における最終交渉にのぞみました。交渉では、「12,000円以上」の賃上げ、実効ある超過勤務縮減策など公務労働者の要求実現を重ねて求めました。
 しかし、切実な賃金要求に対しては、「官民較差にもとづく適正な給与水準確保」(人事院)、「人事院勧告制度の維持尊重」(総務省)とする、従来の枠を一歩も出ないきわめて不満な回答が示されました。
 初の月例給引き下げ、国会での附帯決議、さらには、歴史的なILO勧告など、公務員賃金やその決定システムをめぐるこの1年間の周辺状況の大きな変化にもかかわらず、従来どおりの回答を十年一日のごとく繰り返す総務省・人事院の姿勢は断じて認められません。
 最終回答の内容を職場・地域から確認し、公務労働者の生活と労働条件改善にむけて、新たなたたかいを発展させていく必要があります。
人事院勧告の社会的影響を重く受けとめよ
 人事院との交渉には、公務労組連絡会から、駒場議長を先頭に、若井副議長、浜島事務局長、高坂・黒田両事務局次長、吉田幹事、先水幹事が出席、人事院側は、勤務条件局の和田課長補佐、箕浦課長補佐が対応しました。
 はじめに駒場議長は、「昨年の『マイナス勧告』は、人事院勧告制度の根底をくつがえすものだった。4月遡及実施も二重三重に認めがたい。そのなかで、あらためて、人事院に対して、公務員の利益擁護機関としての役割を果たすよう強く求める。また、公務員賃金は、民間賃金や地域経済に影響し、自治体では保守系の首長からも、賃下げに懸念する声が出ている。こうした社会的影響力をふまえた対応を求める」とのべ、回答を求めました。
 これに対して、和田課長補佐は、次の通り回答しました。
【人事院最終回答】
1、官民較差に基づき、適正な公務員給与水準を確保するという人事院の基本姿勢に変わりはない。
2、公務員の給与改定については、民間給与の実態を正確に把握した上で、適切に対処する。また、年間における官民給与を均衡させる方法については、皆さんの意見を十分聞き、納得を得るよう努める。
3、給与勧告作業にあたっては、較差の配分、手当のあり方などについて、みなさんと十分な意見交換を行うとともに、要求を反映するよう努める。
  地域における公務員給与のあり方については、地域に勤務する公務員の給与に関する研究会の報告を待ち、皆さんの意見を十分聞きつつ、引き続き検討を進める。
4、一時金については、民間の支給水準等の正確な把握を行い、適正に対処する。
5、公務員の勤務時間・休暇制度の充実に向けて、関係者の意見を聞きながら引き続き検討を進める。
  超過勤務の縮減については、育児・介護を行う職員の上限規制、目安時間を中心とする指針などの実施状況を踏まえつつ、一層の縮減に向てけ努力する。
6 短時間勤務制度の導入や非常勤職員制度の整備については、関係機関と連携を取りつつ皆さんの意見を十分聞き具体的な検討を進める。
7 「女性国家公務員の採用と登用の拡大に関する指針」に基づく施策が着実に実行されるよう努める。
「年間の官民給与均衡」はマイナス前提だ(交渉団)
 この回答を補足して、和田補佐は、「人事院勧告は、労働基本権制約の代償措置であるとともに、国公法で規定された情勢適用の原則を具体化するもの。したがって、昨年のように給与が下がる局面にあっても、その原則は変えられない。今年も、民間では全体としてベアゼロとなっており、未決着の中小組合の動きには引き続き注目したい」とし、また、定期昇給見直しなどの民間賃金の動向については、「すでに定期昇給制度を廃止した企業や、検討中の企業も多い。民間の動向からも、より実績を反映させた給与制度は必要だ。かならずしも公務に適切とは言えないが、大きな転換期のなかで、公務員だけが別世界とはいかないと考える」とし、政府の「公務員制度改革」も念頭に、能力・業績主義反映の給与制度の必要性にも言及しました。
 さらに、比較対象企業規模の見直し要求については、「一方で、国会質問などで大企業にかたよりすぎるとの逆の圧力もある。人事院として、現行の比較方式が適切と説明してきた。これを1,000人以上の規模に引き上げることは、現状では困難だ」と回答しました。
 また、労働時間にかかわって、箕浦課長補佐は、「超過勤務縮減、勤務時間管理の必要性について、年次報告や連絡会を通して徹底してきた。先日も各省の人事担当官会議で、人事行政の重要事項として勤務時間の管理を要望した。引き続き、各省に努力を要請していきたい」とのべました。
 こうした回答に対して、浜島事務局長は、「官民較差にもとづいて機械的に賃金を決定することは、公務員労働者の生活と労働の実態をふまえるものではない。示された回答は、要求に何ら答えておらず、きわめて不満なものであり、認めがたい」としたうえで、「年間の官民給与を均衡させる方法で納得を得るようつとめるとの回答は、今年もまた勧告がマイナスになることを前提にしたものだ。とうてい受けいれられない」と指摘しました。
 和田課長補佐は、「機械的と言うが、民間の実態を正確に把握しており、比較方法には自信を持っている。また、『年間における官民給与の均衡』は、あくまで昨年の国会の附帯決議をふまえて回答として示したものだ。決してマイナスが前提などではない」としたうえで、「これから勧告にむけても交渉の場がある。従来にも増して、みなさんの意見を聞く努力をしていきたい」と回答しました。
 また、若井副議長は、「民間賃金や経済への影響に言及した国会の附帯決議は、人事院勧告の持つ重みを表したものだ。単に民間賃金との比較ではダメだと指摘している。人事院の判断が、日本の進路を左右するほどの重みを持っていることを自覚すべき」と、国会決議の重要性を指摘しました。
 和田課長補佐は、「経済への影響は幅広い論議が必要であり、難しい問題だ。そのことは認識しているが、『官民の均衡』をこえた検討をすれば、人事院の守備範囲を越えることとなる。いずれにせよ、国会決議は重く受けとめたい」とのべました。
 最後に、駒場議長は、「マイナス勧告のもとで、勧告制度の問題点が顕在化しているもとで、去年と同じことを繰り返せば、労働基本権を回復させ、労使交渉で決定するという方向に行かざるを得ないという性格を持っている。今日示された回答は、そうした根本的な問題をふまえれば、断じて認められない」と、公務労組連絡会としての態度をあらためて明らかにし、交渉をしめくくりました。
使用者としての責任を果たせと繰り返し追及
 引き続く総務省との交渉では、人事恩給局総務課の伊藤総括課長補佐、山石課長補佐ほかが対応しました。
 駒場議長は、「公務労働者の処遇改善にむけて、使用者としての総務省の責任は重大だ。また、公務員賃金の社会的影響力も、政府としてどう認識するのかが問われている」とのべ、総務省からの回答を求めました。
 これに対して、伊藤課長補佐は、以下の通り回答しました。
【総務省最終回答】
1、(給与改定について)人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり、同制度を維持尊重することが 政府としての基本姿勢である。平成15年度の給与改定については、この基本姿勢の下、国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処する。
  なお、昨年11月の衆参両院総務委員会附帯決議の趣旨を尊重して、職員団体とも十分に話し合い、理解と納得を得られるよう努めてまいりたい。
2、(ILO条約について)政府としては、従来よりILO条約尊重の基本姿勢をとってきたところである。また、ILO条約の批准について職員団体が強い関心を持っていることは十分認識している。なお、ILO結社の自由委員会第329次報告に対しては、関係機関と相談しつつ、誠実に対応する。
3、(労働時間の短縮について)「国家公務員の労働時間短縮対策」に基づき、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用の促進に努める。
4、(公務の高齢対策の推進について)高齢者再任用制度については、再任用に関する実施状況を把握しつつ、その円滑な運用と定着に向けて、政府全体として必要な対応を進める。
5、(男女共同参画社会の実現について)男女共同参画社会の実現に向け、「男女共同参画基本計画」(平成12年12月閣議決定)に 基づき、関係機関とも連携をとりつつ、女性国家公務員の採用・登用の促進や職業生活と家庭生活の両立支援の充実等に着実に取り組む。
6、(安定した労使関係の維持について)安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めたい。
ILO勧告、国会の附帯決議は重く受けとめよ
 浜島事務局長は、「要求からすれば、とうてい使用者としての回答とは言えない。きわめて不満であり、認めがたい」としたうえで、「労働基本権制約の『代償措置』としての勧告制度が機能していないもとで、勧告制度の尊重とする回答は、アンケートにもとづく公務労働者の生活実態に応えていない。また、経済情勢など社会的影響を重く受けとめるべきとする国会の附帯決議にも応えていない。ILO勧告に誠実に対応するというが、具体的にどう対応するつもりか」とただし、「安定した労使関係の維持は、労使間の合意と納得が重要だ。そのための具体的な手立てを講じるべき。ILO勧告、国会の附帯決議ともに、そのことを指摘している。労使対等の労働条件決定システム確立へ努力せよ」とせまりました。
 また、若井副議長は、「公務員の士気や民間給与、経済に与える影響を指摘した国会決議は、国民の合意でもある。それを政府としてどう受けとめるのかが問われている」とのべ、「刑務所の暴行事件は、刑務官の権利が保障されていないことが背景にある。こうした不正は、システムをあらためるだけでは解消しない。公務労働者の権利がないことに問題の根幹がある」と、労働基本権確立にむけた検討をあらためて求めました。
 伊藤課長補佐は、「附帯決議は重く受けとめている。デフレ対策は、政府をあげてやっている。労使間の交渉・協議については、労働組合の意見も尊重しつつ、十分に対応できるよう努力する」などと回答しました。
 最後に駒場議長が、「人事院勧告制度は、処遇改善にむけて役割を発揮されるべき。マイナス勧告という異常事態のもとで、原点に立ち戻った議論が必要だ。附帯決議では、労働組合の納得や合意を得るための努力を求めているが、それは、使用者としての自覚と責任があってこそ成り立つものだ。それらをふまえれば、『人事院勧告制度の尊重』とする今日の回答は、従来どおりのものであり、断じて認められない」とのべ、交渉を閉じました。
以 上