No.373
2002年12月16日
公務労組連絡会FAXニュース
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「退職手当6%削減」の方針を変えず
= 17日の「閣議決定」を経てただちに法案策定に着手 =
 公務労組連絡会は16日、退職手当の見直し問題で総務省と交渉しました。
 交渉では、総務省側が9日に「原案」として示した「一律6%削減」などを内容とした見直し案があらためて提示され、明日の閣議で了解をえて、法案策定作業をすすめることが明らかにされました。
 公務労組連絡会は、前回の交渉に加え、新たに1万9千名分の「退職手当削減反対署名」を提出しながら、すべての公務労働者の生活に直結する問題として手当削減は断じて認められないとの立場から総務省をきびしく追及しました。
行政の信頼性確保へ見直しが必要(総務省)
 交渉には、公務労組連絡会からは、駒場議長を先頭に、浜島事務局長、高坂・黒田両事務局次長、松本幹事(自治労連)、吉田幹事(全教)、先水幹事(国公労連)が参加、また、郵産労からは田中委員長が出席しました。総務省は、人事・恩給局総務課の伊藤課長補佐、宮島参事官補佐ほかが対応しました。
 はじめに、浜島事務局長は、「国家公務員の退職手当の引き下げは、地方公務員や国営企業など関連労働者に直接の影響を及ぼす問題であり重大だ。そのことから、10月に要求書を提出し、公務労組連絡会としての要求を示してきた。今日時点での総務省の考え方を明らかにしてもらいたい」と回答を求めました。
 これに対して、伊藤補佐は、以下の通り回答しました。
@ マイナス5.6%の較差が出た民間退職金実態調査にもとづき、官民の均衡をはかるため国家公務員の退職手当の「調整率」をあらため、現行の110/100から6/100引き下げて104/100とする。これらは、2003年10月1日から実施し、経過措置として、1年間は107/100とし、2004年10月1日から104/100に引き下げる。
A 指定職への早期退職特例措置を見直し、指定職9号俸相当額(外局の長官クラス)以上は、現行の割り増し措置(2%)を適用せず、指定職7号俸相当額(局長クラス)以上は、割増率を2%から1%に半減する。検察官、裁判官についても同様とする。
B 特殊法人等への役員出向にあたって、国への復帰を前提として、国家公務員を退職して特殊法人・独立行政法人の役員に就任した者は、法人では退職金を支払わず、国への復帰後の退職時に国家公務員としての退職手当を1回だけ支払う。これらは、上記Aをふくめて、改正法成立後、すみやかに実施する。
C これらの方針は、明日(17日)の閣議で片山総務大臣が報告し、その後、通常国会での法案提出にむけて策定作業をすすめる。職員団体の意見を十分聞いてきたところだが、国民の声など取り巻く情勢のきびしさのもと、行政の信頼性を確保するための措置として理解いただきたい。
現場の第一線で働く職員に目をむけたのか(交渉団)
  これらの回答は、9日に示された「原案」と一言一句変わっておらず、浜島事務局長は、「試算では、ごく普通の職員で162万円もの引き下げとなる。『マイナス勧告』に加えて退職手当まで削減されれば大変な生活水準の切り下げとなる。そうした職員の生活実態をふまえた議論がされたのか。また、高級官僚に対する特例措置の一部の見直しだけで問題の根本が解決するのか。国民の批判は、特権官僚の『天下り』などにある。公務員制度の見直しとも関連させた検討が必要だ」と問題点を指摘しました。
 また、検討作業のすすめ方にかかわっても、「先週の9日にはじめて『原案』を提示し、1週間で閣議決定することは重大だ。労働組合との合意の大切さはILO勧告も指摘している。そのことからも、とうてい容認できない」とのべました。
 交渉参加者からは、「国営企業では、退職手当は労使の交渉事項だが、今回の賃金改定でも初の『マイナス裁定』となったように、非現業国家公務員の賃金・手当の動向がストレートに影響する。組合員へのアンケートでは、『生活きびしい』との回答が65%を超えた。生活を直撃する退職手当削減に反対する」(郵産労・田中委員長)、「たしかに多くの民間企業では退職金が減らされているが、労使間で十分に交渉し、合意が大切にされている。なのに、『官民均衡』と言って、わずか1週間で決めてしまうのは理屈に合わない」「民間はリストラで下がっている。単純に民間に合わせる手法でいいのか。これを繰り返していけば、果てしのない賃下げとなる。『官民均衡』の是否をふくめて根本から考え直せ」「高級官僚に対する一部の見直しで『国民の声』に応えたこととなるのか。『行政の信頼性の確保』と言うが、信頼性を確保するため日夜奮闘しているのは、現場の第一線で働く一般職員だ。そのことに目をむけず、一律に手当を削減する『見直し』はそもそも間違っている」などきびしい追及の声があがりました。
見直しても事務次官は7,800万円も支給
 これらの追及に対して伊藤補佐は、「額が減れば生活にダメージ与えるのは当然だ。それでハッピーな人はいない」などとのべたうえで、「しかし、国民の税金から退職手当が出されている以上、各方面から納得がえられない。そのため調査した結果、6%の切り下げとなったことは理解してもらいたい。民間とは手当の性格が違うが、全体として国民の理解をえるうえで官民の均衡が必要だ。高額な退職手当の見直しについては、59歳で退職した事務次官を例にとれば、現行の8,900万円から約1,100万円減額されて7,800万円となる。『公務員制度改革大綱』で検討事項であり、全般的に見直しをすすめていく」と回答し、宮島参事官補佐も、「実態調査自体は3年前に実施したものであり、すでにその当時よりきびしくなっているとの声も聞こえてくる」などとして、「退職手当削減は国民の声」との主張を繰り返しました。
 こうした回答をふまえて、最後に駒場議長は、「退職手当削減は、財政危機を労働者・国民に転嫁するための手立てとして、公務員人件費政策として出てきたものだ。しかし、公務員賃金引き下げに加えた退職手当削減は、生活不安と消費減退をまねき、日本経済をいっそう深刻にする。また、高級官僚の退職手当は、『天下り』禁止など政官財のゆ着を断ち切るための公務員制度の抜本改革と一体での検討が必要だ」とし、「原案提示からわずか1週間後の決定は、現場の労働者の合意と納得をえられたとは言えない。そうしたことからも、本日示された見直し方針は認められず、再検討を求める。引き続き法案作成にむけて、公務労組連絡会との誠意ある交渉・協議と合意のもとで検討をすすめることを求める」とのべて交渉を終えました。
「退職手当削減反対署名」17万6千筆を提出
 公務労組連絡会は、退職手当の見直しに反対して署名にとりくみ、別途提出した国公労連の署名とあわせて、公務労組連絡会全体で約17万6千筆を集約し、総務省に提出してきました。
 「公務員制度署名」と並行したとりくみとなり、また短期間の運動であったにもかかわらず、職場からたくさんの署名が集まったことにも、今回の退職手当引き下げの重大性が示されています。
 17日の「閣議決定」をうけて、法案策定という新たな段階に入りますが、引き続き、来年の法案提出、国会審議において、公務労働者全体の生活を切り下げる退職手当6%削減に反対して、使用者としての政府追及などたたかいを強めていく必要があります。
以 上