No.350
2002年10月9日
公務労組連絡会FAXニュース
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大阪公務共闘発
「公務員制度改革」で「この国のかたち」はどうなる?
= 大阪で「公務員制度改革シンポ」開かれる =
 10月5日の土曜日、大阪市・天満研修センターにおいて、「公務員制度改革シンポジウム」が開催されました。
 このシンポジウムは、大阪労連と大阪公務共闘の共催でとりくまれたもので、7単産2地域2民間組織から137名が参加しました。
 シンポジウムでは、各界の参加者からの発言や、フロアからの質問や意見を交えて、政府がすすめる「公務員制度改革」のねらいや、国民・住民の立場にたった公務員制度のあり方、運動の方向についても議論を深めました。
シンポジストの自由闊達な発言で議論白熱
 神谷大阪労連事務局次長の司会で始まったシンポジウムは、大阪労連・岩佐議長が主催者を代表してあいさつし、「公務労働と公務サービスについて、国民との共同を拡大することが必要だ。また、賃金闘争の再構築にむけて、全労働者が一致した要求でたたかう状況を作ることが求められている」とのべ、そのために、今後さらに奮闘する決意がのべられました。
 コーディネーターを植田大阪労連事務局長がつとめ、討論が進行しました。
 国公労連副委員長の山瀬徳行氏は、「公務員制度改革」のねらいと経過についてのべ、「公務員制度改革の大枠」で示された「新たな政府の組織で働くのは新たな公務員でなければならない」という言葉にこそ、そのねらいのすべてが集約されていることを強調しました。
 毎日新聞論説委員の山路憲夫氏は、「公務員制度の諸悪の根元はキャリア制度だ」とし、政治家の影に隠れて表にでず、責任をとらない官僚に対する批判を展開しました。また、今回の改革が「不純な動機を持ってすすめられている」と、指摘しました。
 市民団体「大阪市民ネットワーク」代表の藤永のぶよ氏は、あいつぐ企業の不祥事は、企業の自主性にまかせるという限界が露呈しており、後追い行政ではいけないと指摘するとともに、市民のためになる公務員制度改革をのぞむとのべました。
 これらの発言も受けて、神戸大学教授の二宮厚美氏は、官僚機構が再編成されようとしているが、政府の「公務員制度改革」は、一部だけの手直しでキャリアシステムを温存しながら、公務労働の公共性を解体するものだと指摘し、能力主義の強化をはじめ、「改革」は失敗に終わると確信できるとのべました。
公務員をめぐるマスコミ報道にも問題があるのでは?
 フロアからは3人が発言しました。高槻市労組の役員という方は、導入された成績評価による賃金支給の実態を報告しつつ、秘密主義で行われている弊害を明らかにしました。また、税務署の職場からは、職場実態を織り交ぜながら「内部告発制度」の確立が必要であること、経済産業省の職場からは長時間労働の実態などが報告されました。
 これに対して、二宮氏は、「成績主義は、人間が評価する以上、客観性が保てず、富士通の例に見るまでもなく、集団性までもが破壊される」とずばりと指摘しました。また、山路氏も、能力主義に成功事例はほとんどなく、評価問題に対抗できるのは労働組合であり、労働基本権の回復を主張し、労使の議論を進めるときではないかと政府に迫る必要があるとのべ、「公務員労働組合が人勧制度に安住してきたのではないか」と苦言も呈しました。
 これに対し山瀬氏は、労働基本権問題を議論の対象とすることを求めてきたが、政府はまともな対応をとらず、ILO総会でも世界各国から批判されていることを紹介しました。
 藤永氏は、民営化論議が盛んだが、目的と手段が入れ替わっているのではないか、市場には理念や原則が現れないと指摘しました。
 フロアからは、「人勧の引き下げに対するマスコミの報道に問題があるのではないか」との問題提起に、山路氏は、「攻められるのは慣れていない」としながら、民間準拠は仕方がないのではないかといいつつも、賃下げの4月遡及だけはおかしいとのべました。そのうえで、民間のリストラは不合理であり、同時に大企業労組の対応にも問題があると指摘しました。みずから新聞報道の限界を認めながら、実態を率直に教えてもらい、積極的に提言してほしいとの発言がありました。
 コーディネーターの植田氏は、討論の角度を変えて、「国民の命を守るために公務労働者は何をすべきか」という問いをシンポジストに投げかけました。
 藤永氏は、21世紀は環境の世紀であり、専門性を持った自治体職員が求められており、これによって循環型社会が実現すると主張しました。山瀬氏は、中央集権国家への動きとのたたかいが必要であり、内部告発制度の法制化やキャリア制度を壊すために奮闘したいと決意をふくめてのべました。
 二宮氏は、公務と民間の違いを明らかにし、各分野で公務員像をつくることの重要性をとき、「プロジェクトX」のようにたたかう公務員を作り上げてはどうかとのべました。山路氏は、日本が重大な岐路に立っている今、労組が役割を見直し、憲法との関わりで団結権を「自由権」ととらえることが必要と指摘しました。
 最後の一言発言では、山瀬氏は公務労働の重要性を、山路氏は公益のあり方を、二宮氏は労組の役割が大きいことを、藤永氏からは国民・市民がどうなるのかを考えないといけないと意見がのべられ、シンポジウムの幕を閉じました。
以 上