No.344
2002年9月26日
公務労組連絡会FAXニュース
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27日の閣議で「完全実施」を決定
= 人事院勧告の取り扱いをめぐって総務省と交渉 =
 秋季年末闘争の「第1次中央行動」を翌日にひかえて、公務労組連絡会は26日夕刻、2002年人事院勧告の取り扱いをめぐって総務省と交渉しました。
 交渉では、公務労働者の生活を悪化させるだけでなく、景気後退など国民生活の全般におよぼす影響をふまえ、あらためて「賃下げ勧告の実施はするな」と強く求めました。
 しかし、総務省当局は、「勧告制度の尊重」をくりかえし、明日27日の閣議で「完全実施」を決定する方針であることを明らかにしました。また、退職手当の見直しについても、来年の通常国会に法案を提出することを閣議で決定することが表明されました。
 国家公務員の賃金を年間で平均15万円も引き下げる「不利益勧告」を、そのまま閣議決定することは、公務員の生活を守べき使用者としての責任を投げ捨てるものにほかなりません。そのことから、交渉では、閣議決定はとうてい認められないことを表明し、政府としての再検討を強く求めました。
 
「勧告制度の尊重」に固執、退職手当削減も閣議決定
 総務省との交渉には、公務労組連絡会からは、駒場議長を先頭に、浜島事務局長、高坂・黒田両事務局次長、吉田幹事が出席し、総務省側は、人事・恩給局総務課の伊藤課長補佐、山石課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、駒場議長が、「すでに公務労組連絡会の考えを示してきたが、賃下げとなる今年の勧告の実施は断じて認められない。新聞報道では、明日、閣議決定され、10月中旬開かれる臨時国会に提出されると伝えられており、きわめて重要な段階をむかえていると承知している。現段階での総務省としての見解をうかがいたい」とのべ、回答を求めました。
 総務省側からは、要旨、以下の回答が示されました。
【総務省回答】
 @ 今年の人事院勧告は、8月8日に提出されて以来、各府省の間で検討をすすめてきたところだ。民間の経済情勢や、公務員の給与をめぐる環境はきわめてきびしいなか、総務省としては、給与関係閣僚会議等において、労働基本権の代償措置としての根幹をなす人事院勧告制度を尊重する立場で意見をのべてきた。
 A その結果、明日2回目の給与関係閣僚会議が開かれ、勧告通りの給与改定がなされるよう決定されるものと期待している。その後の閣議では、政府としての取り扱い方針が決定されるものと承知している。
 B 本年の給与改定は、職員のみなさんには、誠にきびしい内容となるが、ご理解をいただきたいと思っている。
 C 退職手当については、9月20日に公表した官民比較の結果にもとづき、官民均衡の観点から、支給についての見直しをおこなう必要があると考えている。所要の法改正にむけて、内容の検討を経て、次の通常国会に法案を提出したい。これらの方針については、明日の閣議において、給与改定方針とあわせて決定をしたいと考えている。
「マイナス2.03%」は人事院の調査結果として尊重する
 これを受けて浜島事務局長は、「勧告の完全実施は、公務労組連絡会の賃金要求からして、とうてい受けいれられない。さらに、広範な国民への影響を考えれば、賃下げ勧告の決定はすべきではない。この間の交渉でも、『勧告制度の尊重』の一点張りで、使用者・政府として、どう検討したのかが見えてこない。職員や国民への影響を十分に考慮したものとはとても思えず、それを『理解せよ』と言われても、受けいれられるものではない」とのべ、閣議決定に反対しました。
 また、「4月に賃下げを遡及させることも、断じて認められない。再考を求める。退職金の調査結果は承知しているが、その取り扱いについては、当該の労働組合と十分に協議すべきだ。そのことから、通常国会に提出して法改正するのは、あまりにも拙速だ」とのべ、総務省としての見解を求めました。
 伊藤補佐は、「勧告の内容がきびしいものであることは理解している。しかし、勧告のモノサシとして民間準拠でやってやってきたのがこれまでの方法だ。人事院が調べた結果として、2.03%という官民較差が示されている。勧告制度は労働基本権制約の代償措置であり、それを尊重するのが総務省としての基本的姿勢だ」と、同じような回答を繰り返しました。
 これに対しては、交渉参加者から、「そもそも2.03%という数字が極端だ。なぜ出てきたのか。日経連など、ほかのどの調査を見てもそんな数字にはならない」「今年になって、人事院の給与実態調査の結果が急激に下がっている。調査方法を変えた結果だ」「勧告実施で15万円もの年収減となる。民間を上回る賃下げだ」などと追及が集中しました。
 しかし、伊藤補佐は、「こちらには勧告しか資料がない。人事院が調査した結果、そうした数字が出たのであり、われわれとしてはそれをうけたまわるしかない」とのべ、中身はどうあろうが、あくまでも「勧告通り」に終始しました。
4月からの遡及は「合理性がある」と強弁
 また、賃下げの4月遡及にかかわっては、「総務省としての見解を示す」と前置きしつつ、伊藤補佐は、「人事院勧告は、情勢適用の原則のもと、毎年4月における官民の給与実態の調査にもとづき、国家公務員給与と民間企業の給与との均衡を確保するために出されている。そのことから、4月に遡及して改定する方式が72年以来定着しており、それにより4月からの年間給与における官民の均衡がはかられてきた。すでに適正に支給された給与を不利益変更することは、法的安定性や既得権尊重の観点から慎重であるべき。それをふまえ、今回は、法施行日以降の給与、具体的には12月の期末手当から調整することとなっており、情勢適用の原則に照らして合理性がある。なお、12月の期末手当による調整措置は、もっとも適当な手段であるとともに、そのことにより一時金としての性格を変えるものではない」などと回答しました。
 さらに、退職手当の見直しについては、「明日の閣議では、具体的な数字を出したり、施行時期を決定したりするわけではない。それらは、次の通常国会にむけて、今後、検討する課題だ。そのなかで、今後も、みなさんの意見も十分うかがっていく」として、労働組合との交渉・協議の必要性を認めました。
 最後に、駒場議長は、「今日示された回答は、要求とは正反対であり、認められるものではなく、勧告実施を決定すべきではない。勧告制度の尊重と言うが、労働基本権制約の『代償措置』として勧告制度があるもとで、不利益をせまる勧告は『代償措置』としての役割を放棄し、本来の目的から逸脱したものだ。責任ある中央人事行政機関である総務省が、勧告をそのまま実施するのはきわめて遺憾である。また、高級官僚の高額な退職金への批判は衆知のことであるが、一般職だけを調査した結果をもって見直すことには問題があり、削減を前提とする見直しには反対だ。その点から、労使協議もないままに閣議決定することは、手続きからも問題がある」と、あらためて公務労組連絡会としての主張をのべ、交渉を閉じました。
以 上