No.337
2002年8月6日
公務労組連絡会FAXニュース
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マイナス2%の賃下げを回答
= 公務労組連絡会が人事院との最終交渉を実施 =

 公務労組連絡会は6日、2002年勧告を前にした人事院との最終交渉を配置し、勧告の具体的な内容について追及しました。
 人事院からは、「俸給表のすべての級について引き下げ改定を行う」とする、勧告制度初の本俸マイナス勧告が示されました。引き下げ率は、マイナス2%となり、この賃下げを4月にさかのぼって「調整」するとして、12月のボーナス減額が見込まれています。
 人事院は、すでに支払われた賃金の「返還」を、「情勢適用の原則にかなう」などと強弁していますが、「不利益不遡及」の原則からはずれた違法とも言えるやり方です。
 勧告制度はじまって以来の基本給引き下げは、断じて認められるものではありません。最終交渉では、賃下げ勧告の不当性について追及するとともに、この間、公務労組連絡会とのまともな交渉もせず、一方的に賃下げを回答してきた人事院の不誠実な姿勢をきびしく追及しました。

基本給引き下げにくわえ一時金・扶養手当の削減なども
 18時からの最終交渉には、公務労組連絡会から駒場議長、松村・田中両副議長、浜島事務局長、黒田・高坂両事務局次長、吉田幹事、松本幹事のほか、国公労連から近藤執行委員が出席しました。人事院側は、給与1課の和田縁課長補佐、職員課の箕浦正人課長補佐が対応しました。
 はじめに、駒場議長から以下の発言があり、人事院に回答を求めました。
 公務労組連絡会は、組合員の生活と労働の実態をふまえた要求として、人事院と政府に対して、春闘段階では、平均17000円の賃金引き上げをはじめとした賃金・労働条件の改善を求めてきた。
 この春闘要求に対する3月19日の回答をふまえ、さらには民間賃金交渉の推移ならびに経済情勢を見極めつつ、6月11日には、「夏季重点要求書」を人事院に提出して以来、勧告への公務労働者の要求反映を求めてきた。そのなかで、7月3日には1200名、7月31日には3500名の全国の仲間が結集する中央行動を実施し、また、30万筆にせまる「賃金改善要求署名」を人事院に提出し、本日からは人事院前「座り込み」行動を実施している。
 この間の特徴は、私たちの運動に対する民間の労働者からの共感がひろがっていることだ。そのことは、人事院勧告が民間労働者をはじめ国民にも大きな影響を与えるということを証明している。人事院がどのような勧告を出すのか、国民的にも注目が集まっている。公務労働者をはじめ、国民の願いに応える回答を示していただきたい。
 これに対して、人事院からは、以下の回答が示されました。

≪人事院の最終回答≫
 本年の勧告については、民間賃金の動向や雇用情勢が従来にない厳しい状況の中、中立第三者機関として真摯に検討を行ってきた。
 本年は、べースアップ中止や賃金カットを行っている企業が増加し、公務員給与が民間のそれを上回ることも想定される状況にあって、人事院勧告の意義を念頭に置き、各界、各層の意見を幅広く聴取し、職員団体の意見等も十分に踏まえ検討してきたところである。
その結果は、次に示すとおり大変厳しい結果となった。
 以下、主な事項について回答する。
1、勧告日は、8月8日となる予定である。
2、官民較差については、2%を若干超えるマイナスとなる見込みである。較差の取扱いについては、現行の俸給と諸手当との配分比率を大きく変えないよう配慮した。
(1)俸給表は、マイナス格差を踏まえ全俸給表の全ての級について引き下げ改定を行う。
(2)諸手当は、扶養手当のうち配偶者に係わる手当を2,000円引き下げることとした。また、子等に係る手当のうち3人目以降について2000円引き上げることとした。これらの措置は、較差がマイナスであることへの対応であるほか、職員の家計負担の実情、女性の社会進出などに伴う家族の就業形態の変化及びこれらに伴う民間における配偶者手当見直しの動き等も考慮したものである。今後、扶養手当についてはその在り方について見直しも必要になると考えている。
 なお、住居手当のうち自宅に係わる手当の在り方について速やかに検討を進めたい。
 また、俸給の調整額の平成8年改正に係わる経過措置を廃止し、新たな措置を講ずる。
3、期末・勤勉手当については、民間の一時金が昨年の夏は前年比で伸びたものの、冬が大きく落ち込んだと指摘されていたことから心配していたが、最小限のマイナスに止まった。この減について、本年度3月期の期末手当で措置する。
 このほか、民間における支給実態を踏まえ、年2回の支給に改めることとし、民間における一律支給分と考課査定分の比率に合わせる形で3月期の期末手当を6月期と12月期の期未手当、勤勉手当にそれぞれ配分する。
4、改定の実施時期等について、本年の給与改定は、給付水準を引き下げる内容であり、改正給与法は施行日からの適用とする。その際、官民給与を実質的に均衡させるため、12月期の期期末手当の額において所要の調整措置を講ずる。
 給与勧告は、4月時点における民間給与と合わせており、4月に遡って改定してきた経緯がある。法律上、上がる場合も下がる場合も想定されており、実質的に4月時点で合わせることが情勢適用の原則にかなうものであると考えている。
5、地域における公務員給与の在り方については、昨年の報告で人事院としでの問題意識を表明し、本年は民間給与の実情等をより的確に把握するため、標本事業所の層化・抽出方法の見直しを行った。今後、関係方面と意見交換しながら、早急に結論を得るべく具体的な検討を進めていきたいと考えており、皆さんも前向きに対応していただきたい。
 本年の勧告は、月例給を引き下げるという初めての勧告であり、公務員にとって極めて厳しい内容のものであるが、人事院としても検討に検討を重ね、苦慮しつつ決断したものであることを重く受け止めていただきたい。
 また、本年は給与に関する勧告に併せ、公務員制度改革について報告し、人事院の考えを表明している、立場こそ違え、よりよい公務員制度としていくことはお互い異存のないことと考えられ、今後とも議論を尽くしていきたいので、よろしくお願いしたい。
「たった2回の交渉で賃下げをするのか!」と怒りが集中
 この回答に対して、浜島事務局長は、はじめに、「『職員団体の意見等も十分に踏まえ検討』などと言うが、最終交渉もふくめて、公務労組連絡会とはわずか2回しか交渉していない。民間賃金が確かにきびしいのはわかるが、正式に賃下げ勧告を聞いたのは今日はじめてだ。仮に賃下げするにしても、誠意ある対応こそ必要だ。その点で、われわれが要求してきた交渉回数を増やすことや、交渉対応のレベルアップに応じなかったことは遺憾である」と「交渉ルール」にかかわる問題点を強く指摘したうえで、以下の点を主張しました。
 @ マイナス勧告は認められない。反対の態度を表明する。民間準拠の結果であるとしても、労働基本権が制約されているもとでは、公務労働者の生活と要求に応えることが必要であり、生活切り下げは絶対反対というのが圧倒的公務労働者の声だ。
 A 一時金の扱いについては、勤勉手当の割合を引き上げるのは「公務員制度改革」の先取りだ。民間でも失敗している成績・業績主義は、公務にはなじまない。
 B 諸手当関係の改悪は、実生活を切り下げる。とくに手当支給者を直撃する。実態をふまえて対応すべきであり、扶養手当の切り下げは反対する。また、調整額については、引きつづき協議をおこなうこと。現場の意見をふまえて対処すべきだ。
 C 実施時期については、議長がすでにふれたところであり、不利益不遡及の原則を守ることが法律からしても当然である。4月実施は見直すべきだ。
 D 地域間給与については、同一労働、同一賃金からも、公務員賃金のあり方からも反対する。その立場から、検討するにしても、公務労組連絡会との議論をつくすよう求める。
 E 公務員制度については、今年度の公務員白書でも強調されている「全体の奉仕者」としての公務員の在り方と制度の確立をはかる見地からの検討が重要だ。具体的課題での必要な協議を求めておきたい。
 F 勤務時間関連について見るべき回答がないのは残念だ。男女共同参画社会にむけて積極的な施策をうちだすべきだ。
 また、交渉参加者からも、「交渉ルール」に関連して、「それで中立な第三者機関と言えるのか」「民間でも賃金を下げるときは労働組合と十分に交渉する」などの発言があいつぎ、きびしく人事院を追及しました。
 これに対して、和田補佐が、「交渉プロセスの問題については、申し訳ないが私には答えられない。担当の部局に伝えたい」などと、人事院の代表として出席しているみずからの責任を棚上げにする態度をとったため、交渉は一時紛糾しました。
 重ねて、「きちんとした改善の方向を示せ」と強く求めた結果、最終的には、和田補佐は、「今後、みなさんとのきちんとした対応がはかれるように、関係する部局と相談していきたい」と回答しました。
 4月からの賃下げ実施にかかわって、和田補佐は、「給与法成立後の施行となり、不利益不遡及の原則からははずれない。ただ、『情勢適用の原則』があり、民間との均衡をはかるため所用の調整が必要だ」と繰り返しのべ、「法制上も問題がある。人事院として、違法行為をするな。きちんとルールを守れ」と追及すると、「法制上の議論は、国会の場ででやってもらうことになる」などとのべ、あくまで事実上4月からの賃下げ実施に固執しました。
 労働時間にかかわって、箕浦補佐が、「各省担当者による超勤縮減対策会議で実質的な議論をはじめている。それには人事院も参加しており、制度改正などの枠にとらわれず、職員の改善になる方向をつめてみたい。そこで実効ある議論がされれば、超勤縮減にむけて効果的な結果がでるものと期待している」と現状を報告するにとどまりました。
不当かつ不法な勧告は断じて認められない
 最後に駒場議長が、次のように発言し、交渉を締めくくりました。
 2%ものマイナス勧告と、その4月からの実施が勧告されるなら、断じて認められない。これまで政府が勧告を値切ったことはあったが、人事院みずからが賃下げを勧告したことはなかった。その点から、不利益勧告が、果たして労働基本権制約の「代償措置」と言えるのか。公務員の利益擁護機関としての役割の放棄だ。4月実施も、「調整」の名のもとの遡及にほかならない。不当かつ不法であり、断じて認められない。
 「交渉ルール」にかかわっても重大な問題点を指摘する。賃下げという「非常事態」にあって、誠意ある対応が求められていた。たった2回の交渉は、「勧告作業にあたっては、みなさんと十分な意見交換を行う」との春闘期の回答からしても遺憾だ。量(回数)質(レベル)両面での交渉対応の改善を強く求める。
以 上