No.335
2002年8月2日
公務労組連絡会FAXニュース
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2003年度予算概算要求にむけて政府交渉
ムダを省き、いのちとくらし・雇用、教育を守れ!
〜自治労連・国公労連・全教と公務労組連絡会〜

 自治労連、全教、国公労連の公務3単産と公務労組連絡会の4組織は、小泉政権が2003年度国家予算編成にむけて、6月25日、経済財政運営の構造改革に関する基本方針(骨太の方針第2弾)を閣議決定し、8月末の各府省からの概算要求提出、年末の政府予算編成作業日程が明らかにされてたなかで、国民生活を守る要求行動を実施することを確認しました。とくに「骨太の方針第2弾」が、深刻化している消費不況の打開という国民の最大緊急要求に全く応えないばかりか、巨大化した財政赤字を国民負担で切り抜ける財政、経済のグローバル化における大企業の生き残り支援策、相変わらずのムダな公共投資とういう反国民的予算編成方針を掲げ、さらには公務労働者の賃金(人件費)削減を竹中経済財政担当大臣が表明していることなど労働者・国民犠牲で貫かれた予算方針の変更を求めて「2003年度予算概算要求に向けた申し入れ書」(別紙添付資料)をとりまとめました。
 申し入れ・交渉は、7月18日に経済財政諮問会議と財務省、19日に総務省と厚生労働省、25日に文部科学省に相次いでおこなわれ、交渉には自治労連松本・藤藪中執、全教吉田(洋)中執、国公労連先水中執、公務労組連絡会浜島事務局長、黒田事務局次長がそれぞれ参加しました。以下交渉の概要を掲載します。

《経済財政諮問会議》
国民生活重視へ予算編成方針の根本的転換を求める
 内閣官房・経済財政諮問会議交渉は、武田・加茂両政策統括官付参事官付はじめ4名にたいしておこなわれました。諮問会議が、予算編成の基本方針である「骨太の方針第2弾」をとりまとめ、小泉政権の予算編成を実行することから、税財政の基本理念と方向を質すものとなりました。
 とくに予算編成の基本に国民のいのちとくらしを守ることをしっかりと位置づけ、税財政の基本とし、労働者・国民負担増をおこなわないことを求めました。これにたいしての回答は、財政赤字削減・財政建て直しと日本経済立て直しが課題だとして、国と地方の税配分の見直し、社会保障・教育などの支出見直し、成長産業への支援が求められているとして、国民犠牲の方針を示しました。
 これに対して参加者から、アクアラインや諫早湾干拓などで明らかなように、国民への負担を増大する一方で環境を破壊する高速道路や架橋、ダムや埋め立てなど大型公共事業を全面的に見直し、ムダな事業は中止すること。未来社会の担い手である子どもと教育に必要な予算を付けること。診療抑制と医療荒廃をまねく医療費負担増政策をやめること。BSEや食料の安全などいのちと安全を確保する要員の増員、公務員賃金改善と費用の確保などを求めました。とりわけ、大企業減税の一方で課税限度額の引き下げや消費税の増税計画をおこなわず、全国どこでもいのちとくらしが守られる行・財政制度の確立を強く求めました。
 対応した担当者は、景気回復と国際化に対応して企業減税の必要性を述べるとともに、国と地方との役割見直しをおこない、より地方の責任での施策が実行できるようにする予算編成の基本方針を再度強調しました。また、近日中に開催される経済財政諮問会議にむけた内部政策検討に当って、「申し入れ」を担当部局に伝えることを約束しました。

《財務省》
「おっしゃられたことはもっともなこと」関係部局に伝達を約束
 財務省交渉は、主計局の宮尾主査が対応しておこなわれた。予算編成作業にあっての要求に対して宮尾主査は、「要望はしっかりと受け止めさせてもらった。関係部局に伝える」ことを約束した上で、財政事情の悪化への対応、施策の重点化が求められていることを明らかにしました。
 これを受けて参加者からは、景気の悪化で中小企業の倒産・解雇が広がっているもとで税金を徴収することも困難、これ以上の課税は景気を一層冷え込ませるだけでなく税金と掛金未納者を拡大し、制度の空洞化が深刻となる事態を指摘し、日本の社会の中心である中小・地場産業の支援策をとることを求めました。(自治労連)また、厳しい情勢だからこそ国の未来をひらく教育に力を入れるよう諸外国との教育条件比較を示し、30人学級や私学助成の拡大を求めました。(全教)そして、拡大する行政サービスに応えるため医療、労働行政現場などでは少ない職員でがんばっていること、そうしたところも一様に予算削減が求められ、重点施策にまわす予算編成は問題であること。(国公)といった指摘がされました。
 これに対し宮尾主査は「おっしゃられたことはもっともなこと」であるとして予算編成作業のなかで活かされるよう関係部局に伝えることを約束しました。そして、予算概算要求基準が8月始めに経済財政諮問会議で決められ、各省から基準にもとづき概算要求が8月末に出され、9月以降、予算編成作業が本格化する日程が示されました。

《総務省》
地方自治、人権と生活をまもることを強く求める
 総務省側からは自治行政局などから8名の担当者が対応しておこなわれました。とくに地方財政問題、住基ネット、郵政公社化などに集中しました。
 地方財政問題では、税制改革議論のなかで義務教育費などの一般財源化や地方交付税総額縮小、地方税の自主財源化などが打ち出されているが、産業基盤の弱い地方や広大な地域では国の支援が削減されれば必要な行政サービスが提供できなくなり、地域間格差が拡大することを指摘(自治労連)し、憲法で保障する国民の諸権利を全国どこでも確保できる財政の確立を求めました。 また、公教育である私学に対する助成や就修学保障制度の拡充が不況のもとで求められていることから必要な財政措置を含めて施策の拡充を求めました。(全教)
 住民基本台帳ネットワークを8月より実施する問題では、個人情報が民間業者に流れ、悪用される危険性や防衛庁の人権侵害行為にみられる国家的悪用も懸念されることを示し、住基ネット運用中止を迫りました。これに対し、外部に漏れることのないよう「充分なセキュリティをかけているので安心してもらいたい」と述べるにとどまり、必要な法規制もないもとでの運用は中止するよう再度要求しました。
 郵政公社化については、郵政事業の一部を民間に解放し、事実上の民間移譲をはかり利潤追求の場にすることについての規制と公社の目的に「公共の福祉」を掲げるよう要求しました。これに対し、来年4月からの「郵政公社」は、ひきつづきユニバーサルサービスの確保をめざしており民間業者にもそのことを求めているとして、要求をそらす回答をおこないました。これを批判するとともに、国民の財産である郵便施設と預貯金など資産を守り、全国どこでも安心して利用できる郵政事業を強く求めました。

《厚生労働省》
いのちと雇用、安心と安全を保障する行政を
 厚生労働省交渉は、社会保障、労働政策を中心に7名の担当者が出席しておこなわれました。はじめに各分野から年金・医療・福祉政策、労働基準、雇用行政などについて現状と施策の実施状況と当面する施策の検討課題について説明がされました。その中で、社会保障費が国の予算の4割を占めており、公共事業より多いことを述べ、財政難のなかで医療だけでなく年金・福祉など社会保障制度全般の見直しが必要とする厚労省側の発言には、予算の一部(一般歳出)だけを取り出した「身勝手な財政支出論だ」と指摘し、社会保障費の経済的波及効果をふまえ、予算を拡大して高齢化・少子化に対応することが必要であることを主張しました。(自治労連) 失業者・若年未就職者が増大しているなかで、職業訓練、職業斡旋行政の拡充と体制強化(国公労連、全教)を求めました。これに対して厚労省側は、深刻な失業状況についての認識を示し、失業保険財政の逼迫、3500億円の雇用安定・職業訓練費用では実態に追いつかない予算状況が出されました。
 また、食の安全や労働安全、医療ミス根絶などいのちとくらしの安心・安全を確保することが厚生労働省に求められていることが求められていることに対し、一刻も早く国民の信頼を回復する努力を求めました。

《文部科学省》
教育の営利企業化は教育を破滅する
 文部科学省交渉は、当局側から初等中等教育局、大学局など関係部局から6名の担当者が出席しておこなわれました。交渉は、教育改革のもとで教育の「自由化」がすすめられ、ますます選別・差別の教育が強化され、大学の独法化や義務教育費国庫負担廃止、学校経営の株式化もだされるなかで、文化省の施策を問いただしました
 大学の独法化については既定のこととして推進する見地を示し、義務教育国庫負担については維持したい旨を回答しました。また、国の責任で30人学級の実現を迫ったのに対しても、各地方自治体の裁量で学級編成は行えばよいとして、小人数指導などエリート教育に力を注ぐ施策を説明しました。
 こうした、文化省の態度に対し、子どもを中心にした学校と教育に国が積極的に財政支援することが世界の趨勢であり、このままでは日本は教育後進国になることを強調し、教育条件改善に力を注ぐことを要求しました。


(資料)
2003年度予算概算要求に向けた申し入れ書

 政府は6月25日、「経済財政運営と構造改革の基本方針」(骨太の方針第2弾)を閣議決定しました。この「基本方針」は、昨年の予算編成基本方針(骨太の方針)を引き継ぐとともに、6月3日、財政制度等審議会・財政制度分科会がおこなった「平成15年度予算編成の基本的考え方について」(建議)をふまえたもので、国民に痛みを押し付ける小泉「構造改革」断行型方針です。なかでも大衆増税と地方交付税削減などの財政改革、負担と受益の見直しを中心とする社会保障改革など、広範な分野について2003年度経済財政運営の基本的考え方などが示されています。
 もとより、長期且つ深刻な不況から早急に脱することは国民的課題です。しかし、経済・税制方策として掲げられているのは、「産業競争力の再構築と経済活性化戦略」「広く、薄く、簡素な税制」「ライフスタイルの選択に中立的な社会制度の構築」「徹底した歳出削減」「国から地方へ、官から民へ」「地方財政改革」など相変わらずの大企業奉仕、国民生活犠牲の施策でしかありません。これでは、日本経済の主役である消費を冷え込ませ、倒産や失業、地域経済の一層の破壊をもたらすことは明白です。
聖域なき構造改革と言うならば、政府支出の全てを見直すべきであり、軍事費の聖域化や無駄な大型公共事業の継続など、全く逆さまの改革と言わざるを得ません。
 21世紀にふさわしい行政と財政は、安心と安全、人権と環境を守る国民のいのちとくらし、雇用、教育を最優先とすることが求められています。そのためにも、税制と財政を国民本位に切り替えていかなければなりません。
 私たちは、国・地方行政、医療・福祉・教育などの公務職場で働く労働者として、国民のいのちとくらしの擁護・向上をはかる立場から、当面する2003年度国家予算の概算要求期にあたって、下記の事項について実現を求めるものです。貴職の誠意ある対応を求めます。

              記

1 財政構造の見直しにあたっては、国民生活の擁護、基本的人権の実現、社会保障の拡充、農漁業の振興、環境の保全という政府の責任を明確にしておこなうこと
@ 国民のいのちとくらしを守ることを財政方針の基本とし、歳入・歳出ともに労働者・国民の負担増をはかる施策はおこなわないこと。
A 公共事業については、大規模開発偏重をあらため、国民生活密着型に転換することとし、国庫補助金のあり方についても抜本的に見直すこと。
B 社会保障制度の連続改悪はおこなわないこと。年金、医療、介護、福祉など社会保障に対する国の財政負担を高め、国民負担の軽減をはかること。
C 教育関連予算を充実すること。義務教育国庫負担制度の堅持、30人学級の早期実現、私学助成の拡充をはかること。
D 地方交付税が、自治体の安定した運営を保障する財政調整制度として十分に機能するよう、必要な地方交付税総額を確保すること。また市町村合併強要の手段となる小規模自治体への地方交付税の削減をやめること。
E 個人情報保護が確立されていない下での「住民基本台帳ネットワーク」実施(8月1日)は凍結すること。
F 公務員賃金水準がはたしている社会的役割と影響をふまえ、賃金の切り下げは行わず、必要な予算を措置すること。
 また、公務員賃金に格差をもちこむ地域間給与見直しは、「同一労働、同一賃金」原則にもとづきおこなわないこと。

2 「競争原理」「市場原理」優先の施策は強行しないこと
@ 医療、介護、福祉、教育などへの競争原理の導入(=独法化、民営化)はおこなわず、公的制度を拡充すること。公共サービスの最低基準を改善し、人件費補助等の拡充をはかること。
  保育所の待機児解消対策、介護要求対応などの必要な施策は、保育・介護条件を悪化させないため政府の責任において実施すること。
A 学問研究の自由と大学自治を侵害する国立大学などの一方的な「再編・統合」、独立行政法人化はおこなわないこと。
B 地域経済や雇用の破壊をまねき、社会的公正さをそこなう規制緩和はおこなわないこと。また、いわゆる「事後規制」をおこなうための公的機関の充実強化をはかること。
C 郵政事業の民営化はおこなわないこと。郵便事業への民間事業者の参入規制を継続すること。新しい「郵政公社」は、公共の福祉、国民の経済生活の安定向上を事業目的とすること。
 また、日本育英会奨学金、中小企業金融機関、「公団」住宅など、国民生活に直接かかわる特殊法人事業の廃止を止め、拡充をはかること。

3 不況打開、雇用対策の拡充施策をおこなうこと
@ 緊急地域雇用特別交付金の継続・改善、職業訓練体勢の強化、失業給付の充実をはかること。
A 医療、介護、福祉、教育や消防・食料管理など国民の安全、環境を守る分野での公務員採用を大幅に増やすなど、公的分野での就労を拡大すること。
A 不良債権処理を口実とする「貸しはがし」などの中小企業つぶしを止め、金融機関の監視態勢を強化すること。
C 不況から地域経済を守り、将来展望を切りひらくため、中小・零細企業支援、農漁業支援など積極的な地場産業支援をおこなうこと。また、消費不況打開と不公平な徴税を是正するため消費税減税・課税見直しをおこなうこと。
D 不況から子どもと教育をまもるため、就修学援助措置の拡充をはかること。
以 上