No.316
2002年3月19日
公務労組連絡会FAXニュース
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「勧告の尊重」(総務省)、「民間給与の正確な把握」(人事院)のきわめて不満な回答〜子どもの看護休暇は5日間新設
= 政府・人事院が2002年春闘期要求に対して最終回答を示す =

 公務労組連絡会は3月19日、総務省・人事院と交渉し、「17,000円以上」の賃上げをはじめとする2002年春闘期要求に対する最終回答を求めました。
 交渉では、公務労組連絡会が、日本の深刻な経済情勢もふまえつつ、政府・人事院の社会的責任を果たすためにも、幅広い労働者に影響する公務員賃金の積極的な改善を強くせまりましたが、総務省は「労働基本権の代償措置として、人事院勧告制度を維持尊重」とし、また、人事院は「官民較差にもとづき、適正な公務員の給与水準を確保する」として、これまでとまったく変わらない回答を繰り返しました。
 一方で、今春闘でも重点的に求めてきた子どもの看護休暇について、人事院は、今年4月1日から年5日間の特別休暇を新設することを明らかにし、切実な要求が一歩前進しました。
 民間のきびしい春闘妥結状況を反映して、政府・人事院の回答もきわめて不満なものとなっています。最終回答が示されて、公務労働者の賃金闘争は、大きなヤマ場を越えましたが、国民春闘共闘に結集する中小組合などは、現在でもねばり強いたたかいを続けています。また、医療制度改悪など国民的課題でのたたかいは、これからがいよいよ本番です。
 本日の回答内容を職場や地域で確認し、「4・12国民総行動」など春闘後半のたたかいにむけていっそうの奮闘がもとめられています。

政府として不況打開など国民の切実な願いに応えよ〜総務省交渉

 交渉には、駒場議長を先頭に、松村副議長、浜島事務局長、黒田・高坂両事務局次長、松本幹事、吉田幹事、先水幹事が参加しました。
 15時30分からの総務省交渉では、人事・恩給局総務課の加瀬総括補佐、山石補佐が対応しました。
 はじめに駒場議長が、「2月15日に要求書を提出してきたが、賃上げにむけた組合員の切実さは強まっている。そのことは、3月13日に2千名が参加した中央行動でも示された。また、この間、要求実現をもとめる『職場決議』などが総務省にもたくさん届いているものと思う。そうした公務労働者の切実な要求を真摯に受けとめて回答するよう求める」とのべ、あらためて誠意ある回答をせまりました。
 総務省は、次のような回答を示しました。

【総務省最終回答】
1、人事院勧告制度は、労働基本権制約の代償措置であり、同制度を維持尊重することが政府としての基本姿勢である。平成14年度の給与改定については、この基本姿勢の下、国政全般との関連を考慮しつつ適切に対処する。
2、退職手当制度の検討に当たっては、十分職員団体の意見も聞きつつ、適切に対応してまいりたい。
3、ILO条約の批准について職員団体が強い関心を持っていることは十分認識している。
4、労使の意思疎通の在り方については、公務員制度調査会「労使関係の在り方に関する検討グループ」の審議経過を踏まえつつ、様々な角度から適宜、意見交換をしながら検討してまいりたい。
5、労働時間の短縮については、「国家公務員の労働時間短縮対策」に基づき、超過勤務の縮減や年次休暇の計画的使用の促進に努める。
6、高齢者再任用制度については、再任用に関する実施状況を把握しつつ、その円滑な運用と定着に向けて、政府全体として必要な対応を進める。
7、男女共同参画社会の実現に向け、「男女共同参画基本計画」(平成12年12月閣議決定)に基づき、関係機関とも連携をとりつつ、女性国家公務員の採用・登用の促進や職業生活と家庭生活の両立支援の充実等に着実に取り組む。
8、安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めたい。

 これに対して、浜島事務局長は、「従来どおりの回答にとどまるものだ。生活と労働の実態をふまえた『17,000円以上』の要求に対する具体的な回答を示すべきだ」とのべながら、@公務員賃金の社会的役割を認識した上での賃上げにむけた積極的な対応、A実態調査などを通した非常勤職員の賃金の引き上げにむけた総務省としての指導、B退職手当の具体的な検討状況の開示、C週35時間労働にむけた検討と超過勤務の上限360時間の引き下げ、D育児休業・介護休暇の所得保障にむけた検討、子どもの看護休暇の実現、E公務員の中立・公正を確保する上で、政官財の癒着を断ち切るための政府としての具体的な施策の実施、などについてあらためて政府の姿勢をただしました。
 加瀬総括補佐は、「公務員給与は、情勢適応の原則から、民間準拠が基本だ。子どもの看護休暇は、人事院規則で検討されるものと推測する。公務員の中立・公正の確保は、公務員だけの問題ではなく、政治や財界など大きな観点で対応しなければならない課題だと認識している」とのべました。
 松村副議長は、「仕組みはわからないでもないが、経済情勢がこれまでになくきびしいとの認識はあるのか。地方自治体では、労使で妥結しても、議会でひっくり返される事態が次々とおきている。国民や経済への影響を考えれば、単に民間準拠では景気はますますダメになっていくということは、国民に責任を持つ政府として認識すべき」と従来の域を出ない回答を批判しました。
 最後に、駒場議長が、「了解しがたい回答だ。人事院勧告制度の維持尊重をふれただけでは、切実な要求に応えたことにはならない。これらの要求の実現にむけて、これからも、引き続き誠実な交渉に応じるようもとめる」とのべ、交渉を締めくくりました。

生計費原則にもとづき公務員の賃金改善をはかれ〜人事院交渉

 16時20分からの人事院との交渉は、人事院から勤務条件局の和田課長補佐、箕浦課長補佐が対応しました。
 駒場議長から冒頭の発言のあと、これを受けて、人事院は、以下の回答を示しました。

【人事院最終回答】
1、官民較差にもとづき、適正な公務員の給与水準を確保するという人事院の基本姿勢に変わりはない。
2、公務員の給与改定については、民間給与の実態を正確に把握した上で適切に対処する。
 民間給与実態調査の見直しにあたっては、基本的枠組みを維持するとともに、調査の信頼性・安定性が損なわれないよう十分配慮する。
3、給与勧告作業にあたっては、皆さんと十分な意見交換を行うとともに、要求を反映するよう務める。
4、一時金については、民間の支給水準等の正確な把握を行い、適正に対処する。
5、公務員の勤務時間・休暇制度の充実に向けて、関係者の意見を聞きながら引き続き検討を進める。
 子どもの看護に係る休暇制度については、年5日の範囲内の期間とする特別休暇として、本年4月1日から実施する。
 また、育児休業の男性取得の促進に向け、引き続き努力する。
 超過勤務の縮減については、育児・介護を行う職員の上限規制、目安時間を中心とする指針などの実施状況をふまえつつ、いっそうの縮減にむけて努力する。
6、「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」にもとづく施策が着実に実行されるよう務める。

 浜島事務局長は、「官民較差にとどまらず、生計費原則により、生活実態と要求にもとづいた検討が必要だ。不況のなかで民間がきびしい状況にあるもとで、その実態把握だけでは、デフレ・スパイラルの状況を打開していけない。国民経済を立て直す立場からの検討をもとめる」とのべ、おおむね総務省交渉と同様の重点要求について実現を強くもとめました。

人事院規則の改定で子どもの看護休暇が4月1日から実現

 和田補佐は、「民間大手の賃金回答が出そろったが、一部をのぞいて『ベアゼロ』の結果だ。電機大手の定期昇給凍結の話も出ており、懸念しているところであり、今後とも動きを注目していく。これまで同様、民間の状況を反映し、適切な給与勧告をおこなう基本姿勢は変わりない」と回答し、箕浦補佐は、子どもの看護休暇の新設にかかわって、「まだ確定ではないが、特別休暇の範囲内で人事院規則の改定によって実施したい。有給の休暇として、小学校入学前までを対象とすることを考えている」と、新年度から5日間の子どもの看護休暇を実施することを明らかにしました。
 これに対して、松村副議長は、「医療制度の改悪が日程にのぼっている。子どもが医療費を気にして、病院にも行けない事態が報告されている。そうした実態を知ってもらいたい。勧告は国民生活に影響する。国民の生活が悪化するなかで、人事院の社会的な役割を果たすことを切に願う」とのべ、松本幹事は、「スト権剥奪の『代償措置』として勧告制度があるならば、人事院は、公務員労働者の立場に立つべきだ。地方自治体では、賃金カットや、ワークシェアリングで手当が削減されている。これで本当に『代償措置』が担保されているのか。勧告の機能が失われている実態を深刻に受けとめよ」ときびしく追及しました。
 これに対して、和田補佐は、「地方自治体の賃金カットには、人事院としてはコメントする立場にはない。ただ、人事委員会の勧告は関心を持って見ている」などと回答しました。
 最後に駒場議長は、「回答内容は理解しがたいものだ。単純な官民較差だけでなく、生計費原則を重視すべきだ。また、十分な意見交換をすると言うのならば、交渉の回数など内容の充実をはかるべき」ともとめたうえで、「人事院の役割が問われている。そのことを真剣に考えるべきだ。3年連続で年収マイナスがつづいているが、人事院勧告制度は、こうした事態を想定したものではないはずだ。人勧制度を是とはしないが、制度のなかでも、職員の利益を擁護するため人事院の役割をはたせ」とのべ、交渉を終えました。
以 上