No.299
2001年11月29日
公務労組連絡会FAXニュース
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育児休業・介護休暇法案を参議院で審議

= 全会一致で採択され30日の本会議で可決へ =


 第153国会に提出されていた公務員の育児休業・介護休暇の改正法案は、11月29日午前に開かれた参議院総務委員会で審議され、満場一致で採択されました。
 委員会審議を経て、法案は30日の本会議で採決され、今国会で成立する見通しとなりました。これによって、育児休業は3歳へ、介護休暇は6か月に延長されます。
 一方、休業中の所得保障や、職場復帰した際の不利益取り扱いの禁止、非常勤職員の適用などで改善が求められていましたが、各議員の質問もそれらの点に集中しました。
 政府は、所得保障については「民間準拠」をタテにして現状維持の姿勢を変えず、また、国立病院の看護婦のように常勤的な仕事をしている非常勤職員への育児休業の適用を求めると、片山総務大臣は、「常勤的な非常勤職員などは制度上は存在しない」などと強弁し、切実な要求に背をむけました。
 公務労組連絡会は、衆議院に引き続き、各単産女性組織を中心に傍聴行動にとりくみ、全教・国公労連・自治労連、全労連女性部、事務局をふくめ15名が参加しました。




●「民間準拠」だけを繰り返す政府答弁


 民主党の高橋千秋議員は、休業中の所得保障にかかわって、「民間準拠を繰り返すが、かつては、公務が先行した例もある。少子化対策は国の政策であり、単に民間準拠ではなく、公務がリードすべき」と追及しました。人事院の中島総裁は、「他の先進国を見ても、G5の国々は無給であり、人事院として経済的支援で政府に一歩踏み出せとは言えない」などと答弁し、「せめて『満1歳まで』ではなく、『1年間』にはならないのか」と求めると、「満1歳となっている民間の雇用保険に準拠した。公務だけが変えるのは適当でない」(財務省杉本主計局次長)と、政府は、壊れたレコードのように「民間準拠」を繰り返すだけです。
 また、高橋議員が、子の看護休暇のすみやかな実施を求めると、中島総裁は「民間企業の実施状況は30%程度であり、公務の実施までにはもう少し時間がかかりそうだ。今後の検討課題だ」とし、片山総務大臣も「今後とも、国会の議論や衆議院の付帯決議をふまえつつ、少子化対策に万全をつくしたい」と答弁しました。
 公明党の魚住裕一郎議員は、「制度をつくっても環境整備が必要だ。職場の雰囲気で育児休業をとれないという意見が4割ある」と実態を示し、改善にむけた努力を求めましたが、「なかなか雰囲気を変えるのは時間がかかる。男女共同参画社会をすみずみまで周知させ、徐々に職場を変えていくしかない」(片山大臣)、「せっかくの制度を積極的に活用できるように、運用面で公務が率先して努力したい」(遠藤副大臣)と答弁しました。



●「常勤的な非常勤職員など存在しない」と総務大臣が強弁


 共産党の八田ひろ子議員は、復帰後の不利益扱いの禁止、所得保障、非常勤職員への適用問題で、政府・人事院を追及しました。「法律には昇任などで差別をしないことが明記されているが、実際には昇任が遅れるとの声もある。また、休業による昇給延伸措置もやめるべき」との八田議員の主張に対して、「定期昇給するには12か月の勤務が必要。ただし、休業期間の2分の1は在職期間として取り扱い、復職後に調整をしている」(大村人事院勤務条件局長)と答弁し、さらに八田議員が、「4割の保障では月10万円ほどしか出ない。この現実をどう認識するのか?」と休業中の所得保障を求めると、「何でもやれるものではない。制度上の限度、財源問題がある。国民の合意と納得が必要だ」(片山大臣)とのべましたが、「共産党は少なくとも6割への引き上げを提案している。1歳から3歳まで無給になるのは大変だ。せめて共済掛金をとるな」と詰め寄ると、片山大臣は、「民間の実態を調べて検討したい」としぶしぶ答弁しました。
 次に、八田議員は、「国立病院の賃金(非常勤)職員は、正規の看護婦と同じ仕事をして、何年も同じ病院で常勤的に働いているが、育児休業がとれない。民間では、パート・非正規職員でも育児休業の対象となる。これも民間準拠ならば、公務も対象とすべきだ」と求めましたが、片山大臣は「制度上、非常勤職員は適用を受けない。常勤的に働いているというが、そもそも、非常勤職員の常勤的任用などは、仕組みのうえで存在しない。必要があるならば、常勤職員にすればいい」などと強弁しました。
 この片山大臣の発言は、連年にわたる定員削減のもとで、国立病院に限らずどこの職場でも、非常勤職員が常勤的に働いて業務を支えている実態を無視したものです。八田議員は、「ILOでも常勤・非常勤ともに均等の権利を保障している。それが世界の流れだ。差別は許されない。まじめに検討せよ」と言葉を強め、政府に検討を迫りました。



●共産党の修正案は否決、全会一致で原案を採択


 社民党の又市征治議員は、休業中の所得保障にかかわって、公務の4割保障は、労基法でさだめる6割の所得保障や、国公法にもとづく休職中の職員への給与保障の水準からくらべてもきわめて低いことを示し、引き上げを求めました。また、1歳になった以降の所得保障の必要性についても言及しましたが、「民間準拠だが、民間でも1年経過した後は、経済面以外にも、さまざまな措置をとるように企業に協力を求めている。そのなかで、新たなコンセンサス(合意)ができるのではないか」(青木厚生労働省職業安定局次長)と民間の動きへの追従を繰り返しました。
 自由党の渡辺秀央議員が公務員の倫理問題、定員削減計画などについて質問、無所属の松岡滿壽男議員が市町村合併などで政府を追及し、質疑を締めくくりました。
 その後、衆議院と同様に、日本共産党が、所得保障の60%引き上げ、断続的な休暇取得、不利益取り扱いの禁止、非常勤職員への適用などを柱にした修正案を提案し、共産(八田・宮本議員)、社民(又市議員)の賛成少数で否決され、原案が全会一致で可決されました。
 また、全会派の共同提出による2つの「付帯決議」も全会一致で採択されています。


【付帯決議】

(国家公務員にかかわる法律)

 政府及び人事院は、本法施行に当たり、次の事項についてその実現に務めるべきである。
1、育児休業制度及び介護休暇制度が一層活用されるよう、代替要員の円滑な確保等、更なる環境の整備に務めること。
2、職業生活と家庭生活の両立支援という法の趣旨にかんがみ、民間企業における実態等を踏まえ、育児休業、介護休暇を取得する経済的援助の在り方について、引き続き検討を行うこと。
3、男性の育児休業取得促進について、調査研究を行い、有効な対策を講ずること。



(地方公務員にかかわる法律)

 政府は、本法施行に当たり、次の事項についてその実現に務めるべきである。
1、地方公共団体において、育児休業制度及び介護休暇制度が一層活用されるよう、代替要員の円滑な確保等、更なる環境の整備について、必要な助言を行うこと。
2、職業生活と家庭生活の両立支援という法の趣旨にかんがみ、民間企業及び国家公務員における実態等を踏まえ、育児休業、介護休暇を取得する職員に対する経済的援助の在り方について、引き続き検討を行うこと。
3、男性の育児休業取得促進について、調査研究を行い、地方公共団体に情報提供を行う等、有効な対策を講ずること。

以 上