No.295
2001年11月20日
公務労組連絡会FAXニュース
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労働基本権のあり方めぐり各党議員が国会質問

= 給与法「改正」法案を参議院総務委員会で採択 =


 11月9月の衆議院本会議で採択され、参議院総務委員会に付託されていた給与法「改正」案は、本日(20日)午後から開かれた委員会で審議され、共産党を除く賛成多数(特別職の給与に関わる法律案は全会一致)で採択されました。また、自民・民主など各党の共同提案による付帯決議が、共産・社民の各党を除く賛成多数で採択されました。
 政府・行革推進事務局によって「公務員制度改革」がすすめられ、12月にも「大綱」決定がねらわれる情勢を反映して、国会でも、労働基本権問題などを中心に「公務員制度改革」にかかわって各党議員の質問が集中しました。
 こうしたなかで、公務労組連絡会は、衆議院に続いて国会傍聴行動にとりくみ、7名(全教・国公労連各2名、自治労連・特殊法人労連各1名と事務局)が参加しました。
 なお、給与法「改正」案は、明日の参議院本会議で採択され、成立の見込みです。


「労働基本権のあり方は国民が選択する問題」と片山総務大臣

 

 総務委員会では、民主・公明・共産・社民・無所属の会から6名が質問しました。

 民主党の高橋千秋議員は、「公務員制度改革の大綱」にむけた現在の検討状況について質問しました。行革推進事務局の西村事務局長は、「12月に決定するため作業をすすめている。各府省や労働組合をふくめて意見交換し、案をまとめ、さらに協議して大綱として発表する。内容は検討中だが、できるだけ具体的なものにしたい。『大綱』を閣議決定するかどうかは決めていないが、政府の共通認識として、各府省に対する強制力のあるものとしてとりまとめたい」と答弁しました。

 また、高橋議員は、「公務員制度改革」を検討するうえで、公務員の労働基本権を認めるべきと主張しましたが、西村事務局長は「給与や人事制度の見直しは、労働基本権とも密接に関連している。まず人事制度の見直し検討をすすめ、それが固まってから、労働基本権の検討をおこなう。なるべく早く結論を出すため鋭意努力している」と労働基本権の検討を先送りする答弁をくりかえしました。さらに、片山総務大臣は、「全体の奉仕者としての公務員にストライキ権があっていいのかという議論もある。労使交渉で労働条件を決定するという考え方も成り立つ。最終的には国民が選択する問題だ」と答弁しました。最後に労働組合との十分な話し合いを求めると、西村事務局長は「職員団体とは誠実に対応し、これまで56回にわたって協議を重ねてきた。これからも誠意を持って対応していく」と答えました。

 つづいて質問に立った公明党の木庭健太郎議員は、主に民間との給与較差の実態などについて質問しました。木庭議員は、雇用情勢の悪化や民間大企業のリストラがすすむもとで、「民間実態がきびしいときに、勧告を単に『完全実施』するのではなく、政治判断で切り込むべきだとの意見もある」として、政府の姿勢をただしました。片山総務大臣は、労働基本権制約の「代償措置」として、あくまで勧告制度を尊重するとの政府のこれまでの基本姿勢を示しつつも、「勧告制度には、制度疲労も出てきた。いつまでも民間に準拠してパラレルでいいのか。官は官らしく、能力重視でメリットシステムがもっと生かされるような制度であってもいい。公務員制度改革は、現行の人事院勧告制度を見直す良いチャンスだ」などとのべましたが、「最終的には国民の判断」とする考えを繰り返しました。

 

「国際公約」守って労働組合との合意と納得で検討すすめよ

 

 共産党は宮本岳志議員と八田ひろ子議員が質問しました。はじめに、宮本議員は「人事院でさえ750万人に影響すると認め、間接的な影響をふくめるとさらに多数の労働者・国民に影響する国家公務員の給与を、3年連続で引き下げることは、個人消費をさらに冷え込ませる結果となる。その立場から断じて法案には賛成できない」と、給与法「改正」案に反対する態度を明確にしました。

 そのうえで、宮本議員は、「級別定数の決定など人事院の役割を縮小し、勤務条件を各省で決定する制度に変えるならば、公務員の労働基本権は保障されてしかるべき。代償措置としての人事院勧告制度を崩す以上、労働基本権のあり方を検討せよ」と強くせまりました。片山総務大臣は、「いろんな議論がある。大切なことは、バランスのとれた制度をつくることだ」と答弁するにとどまりました。

 八田ひろ子議員は、「公務員制度改革」のすすめ方にかかわって、労働組合との「交渉・協議」を問題にとりあげ、「56回の交渉回数と言うが、本当に労働組合と誠意ある対応をしているのか。労使双方の合意と納得こそ必要だ。6月のILO総会での政府の公約を守るべき」と指摘したうえ、「新人事制度」の中で検討されている評価制度について追及しました。八田議員は、情報開示や、不服申立て、救済制度とあわせて、労働組合の関与の必要性を示しました。西村事務局長は、「どのように関与するのかは、労働基本権とのあり方とかかわるので、あわせて検討する。各方面の意見を聞き、できるだけ理解を得るものにしていきたい」と答弁しました。また、八田議員は、実効ある残業規制など労働時間の短縮や、公務職場における賃金の男女格差の実態を示し、その是正にむけた努力を政府に強く求めました。

 その後、社民党の又市征治議員、「無所属の会」の松岡滿壽男議員がそれぞれ質問し、採決の前に共産党の宮本議員が反対討論に立ち、採決に入り、共産党をのぞく各党の賛成で給与法「改正」法案は採択されました。

 

共産・社民をのぞく賛成多数で付帯決議を採択

 

 総務委員会では、「付帯決議」が提出され、共産(八田・宮本議員)、社民(又市議員)が反対し、それ以外の議員の賛成多数で採択されました。

 

【付帯決議】

 

 政府及び人事院は、本法施行に当たり、次の事項について適切な処置を講ずべきである。

1、人事院勧告制度が労働基本権制約の代償措置であることをふまえ、政府は、人事院勧告制度を引き続き尊重するとともに、人事院は官民給与の精確な比較等により公務員給与の適正な水準の維持・確保に務めること。

2、現下の厳しい社会経済事情にかんがみ、国民の公務に寄せる期待と要請にこたえるよう、公務能率及び行政サービスの一層の向上を図るとともに、行政経費の節減に務めること。

3、昨今の不祥事にかんがみ、公務に対する国民の疑惑を招くことのないよう、綱紀の厳正な保持に務めること。(以上)

 

以 上