No.292
2001年11月7日
公務労組連絡会FAXニュース
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「公務員給与水準の在り方の検討」で人事院と交渉

= 今後の検討方向とスケジュールを明らかにさせる =


 人事院は、2001年度勧告における給与に関する報告の中で、「公務員給与水準の在り方の検討」を明らかにし、民間給与の実態把握や、公務部内の給与配分のあり方について「幅広く見直し」をすすめるとしています。
 これは、公務員賃金が「地域の民間賃金に比べて高い」との指摘があったり、「民間の給与実態を必ずしも的確に反映していない」という疑問があるため、それを是正していくための検討が必要という問題意識に立ったものです。
 「見直し」がすすめられるとすれば、国家公務員だけでなく、自治体職員や教員をふくめて、全国的な公務員賃金にも重大な影響をおよぼしかねません。人事院が来春の民間賃金実態調査にむけて、検討作業をすすめるとしていることから、地域における賃金水準の引き下げなどに反対していく必要があります。
 こうしたことから、公務労組連絡会は11月7日、人事院に要求書を提出し、この問題で交渉を実施しました。人事院交渉には、公務労組連絡会から浜島事務局長を先頭に、黒田事務局次長、先水(国公労連)、松本(自治労連)、吉田(全教)の各幹事が出席しました。人事院側は、勤務条件局給与第1課の和田縁補佐他が対応しました。


「営利企業の経営者の声」が「見直し」検討の発端

 

 はじめに浜島事務局長が、別添の「要求書」を手渡し、「給与水準のあり方の検討に重大な関心を持っている。公務員は、全国どこでも統一的な水準の行政サービスを提供する役割を担っており、それを給与面で担保している賃金制度を堅持すべきだ。また、全国的な基準賃金として機能してきた公務員賃金水準の改変は、社会と経済に与える影響が大きい。そのことからも、民間調査では、公務にふさわしい事業所の選択など、公正で科学的な官民給与比較をおこなうべきだ。また、地方人事委員会との協議も必要だが、そのことで、地方の権限をおかすようなことはあってはならない」と要求の趣旨をのべ、現在の検討状況についてただしました。

 和田補佐は、「今年の報告ではじめて検討を表明したが、これまでも、地方の企業経営者との懇談会や、モニター制度のなかでさまざまな意見が出されていた。地方では、公務員の給与が、必ずしも民間の賃金実態を反映していないとの声がある。その背景としては、産業構造の変化や、民間の給与制度の変更などがあるが、倒産や失業など昨今のきびしい情勢のもとで、そうした声は強くなっている。したがって、人事院の問題意識として、水準のあり方の検討を表明した。具体的な調査内容や結果の取り扱いについては、部内で検討中であり、方向が定まった段階で、職員団体と議論していく必要があると考えている」と人事院としての考え方を示しました。また、今後のスケジュールとして、来年2月には調査方法の見直しについて骨格を固めることも明らかにしました。

 これに対して、浜島事務局長は、「景気がきびしいときは、必ず公務員に対する声もきびしくなる。しかし、不景気のもとでも、民間賃金にも影響する点で、公務員賃金が景気の下支えの役割を果たしてきたことも事実だ。そのことを人事院として、きちんと主張すべきだ。見直すと言うが、対象は基本給か?それとも手当か?従来と違った比較方法を考えているのか?」とただしました。

 和田補佐は、「公務員賃金は納税者である国民の納得が必要だ。声があれば、きちんと対応する必要がある。勧告の役割は、適正な公務員給与の確保であり、その基本はいささかも変わらない。具体的な中身については、現段階では検討中としか申し上げられない」と回答しました。

 

地方人事委員会に対する「介入・干渉」はやめよ

 

 参加者からは、「民間企業経営者の声を検討作業の動機にするのはいかがなものか。懇談するなら労働組合ともやってもらいたい。地方公務員賃金について「ラスパイレス指数が高い」との批判がある。しかし、実際にはラスパイレス指数が100を割っている自治体が7割で、70、80台のところもある。正確な情報を国民の前に明らかにすべきだ」「教員の場合は、全国どこの学校でも同水準の教育が求められており、法律でも全国的に均一性のある賃金が定められている。だから、民間より高い場合もある。そうした実態をふまえた議論をすべきだ」など自治体や教員の職務と賃金実態にもとづき、意見や要望がのべられました。

 和田補佐は、「国家公務員は、全国的な人事異動もあり、給与も基本的には全国一律だ。そのなかで、地域の実態をより反映した給与水準としていく配慮が必要。みなさんの意見も十分ふまえて、今後、検討をすすめたい」とのべました。

 最後に、浜島事務局長が、「見直しの動機と目的があいまいで、人事院としての主張が見えない。それらを明確にすべきだ。また、国民の声があるというのなら、その内容を明らかにすべき。今後、方向が定まった段階で、さらに具体的な中身で交渉をさせてもらう。今日は、この問題での入口についたという確認をしておきたい」とのべ、今後、公務労組連絡会との十分な協議を求めて、交渉をしめくくりました。

                                   以 上

 

(別添資料)

2001年11月7日

人事院総裁

 中島 忠能 殿

  駒場 忠親

 

公務員給与水準の在り方の検討に関する要求書

 

 人事院は、2001年の国家公務員の給与に関する報告において、全国的な公務員賃金の在り方や官民賃金比較の在り方にも重大な影響を及ぼしかねない「公務員給与水準の在り方の検討」を明らかにしました。

 報告は、各地域に勤務する公務員の給与水準に対して、「地域の民間賃金に比べて高い場合があるのではないかとの指摘がなされている」とし、その理由について、人事院の給与実態調査が「その地域の民間給与の実態を必ずしも的確に反映していないとの疑問から生じている」などとしています。

 こうした「指摘」や「疑問」のもとに、民間給与の実態把握や、公務部内の給与配分のあり方について「幅広く見直し」をするため、速やかに検討をすすめるとしています。

 昨年の調整手当「見直し」では、様々な問題を含む、厚生労働省の「賃金センサス」を用い、さらに地域差関連指標を悪用してまで、誇大に地域間格差をつくりだし、貴院は、私たちの強い反対を押し切って手当の引き下げ改悪を強行しました。その経過からすれば、貴院の立場でも、調整手当「見直し」により地域間賃金格差の是正は行われたはずです。

 にもかかわらず、「各地域の民間給与をより反映した給与水準」への「見直し」検討を行うことは、全国統一の賃金制度を前提にした「同一労働同一賃金」原則による公平な賃金制度を突き崩すことにもつながります。

 貴院も、報告の中で「統一的な給与体系」の必要性について言及しているところですが、地域ごとの水準「見直し」は、地方公務員の給与の在り方に連動し、地方自治の原則にもとづく自主的な賃金決定にも影響する点からも、看過できない問題です。

 こうしたことをふまえ、貴職が下記事項にしたがって対応をはかるよう要求します。

 

 

1、全国的基準賃金である公務労働者の賃金水準と体系の解体につながる、公務員給与水準の在り方についての検討を行わないこと。

2、「同一労働同一賃金」の原則による全国共通の賃金制度を堅持すること。

3、民間賃金実態調査にあたっては、公務にふさわしい組織と人員構成を考慮した事業所選定を行い、勤続要素を加味した公正・科学的官民給与比較を行うこと。

4、地方人事委員会に対する「介入・干渉」を行わないこと。

以 上