No.291
2001年11月6日
公務労組連絡会FAXニュース
◆トップページへ ◆私たちの運動ページへ


給与法「改正」法案を衆議院総務委員会で採択

=「公務員制度改革」をめぐる議論が活発にかわされる=


 3年連続で年収引き下げとなる給与法「改正」案は、10月19日に国会に上程されていましたが、本日(6日)午前、衆議院総務委員会において質疑が行われ、約2時間半の審議ののち、共産党を除く賛成多数(特別職の給与に関する法律案は全会一致)で採択されました。同時に、共産党以外の政党の共同提案となる付帯決議が採択されました。
 総務委員会の審議では、給与法案だけにとどまらず、「公務員制度改革」にかかわって、「新人事制度」など労働条件や労働基本権問題まで幅広い問題が議論されました。
 公務労組連絡会では、不当な給与引き下げ法案に反対する立場から、国会傍聴行動にとりくみ、4単産13名(国公労連7名、全教・自治労連各2名、特殊法人労連1名、事務局1名)が参加し、法案審議の行方を見守りました。


「公務員制度改革」では労働組合と幅広く意見交換する


 この日の委員会審議では、与党三党が質問を「放棄」するもとで、野党から5名が質問に立ちました。民主党の大出彰議員は、公務員の採用試験制度や「天下り」問題で質問し、また同党の松崎公昭議員は、「高祖問題」をめぐって、政治と行政の癒着、公務員倫理などにかかわって政府を追及しました。

 つづいて質問に立った自由党の黄川田徹議員は、「3年連続の給与マイナスは妥当だ。しかし、地方では、民間にくらべればまだまだめぐまれているとの声もある。民間の給与実態調査が、かならずしも実態を正確に反映していないのではないか」として、人事院の民間給与実態調査について質問しました。人事院の中島総裁は、「地方の小規模の企業の調査を試みたが、中途採用やパート・アルバイト社員が多く、ふさわしい資料がないのが実態。今後、調査し、公務員の給与に反映できるのかどうか検討したい」と答弁しました。

 さらに、黄川田議員は、「公務員制度改革」にかかわって、労使間協議や、公務員の採用・人材育成などについて政府や人事院の姿勢をただしました。推進事務局の西村事務局長は、「職員団体とは、大臣7回、局長13回、事務レベル29回と合計49回話し合いを積み重ねている。今後とも、幅広く意見交換したい」とし、中島総裁は、「資質を持った公務員が求められる。加えて倫理観や、全体の奉仕者としての意識も重要だ。それを確認できるような試験制度が必要。採用後の処遇についても、(能力・業績を重視すべきという)指摘もしっかり認識し、魅力あるものにしていきたい」と答弁しました。

 

「労働基本権を回復するのは当然だ」と政府を追及


 共産党の春名@章議員は、はじめに「3年連続のマイナスとなる給与法は断じて認められない」と明確に態度表明したうえで、「公務員制度改革」における労働基本権の取り扱いについて政府を追及しました。
 春名議員が「公務員制度改革で避けて通れないのが労働基本権だ。『大枠』や『基本設計』では十分検討と言うが、何をどう検討するのか?いつ結論出すのか?」と質問すると、西村事務局長は、「現在、勤務条件や、人事制度について検討をすすめているところだ。労働基本権の在り方の議論は、それらが明らかになってからとなる。しかし、重要な問題であり、できるだけ早く結論を出したい。12月の『大綱』発表までには、それらを含めて結論を出す」と答弁しました。
 これに対し、春名議員は、「検討の方向が問題だ。労働基本権の代償措置としての人事院勧告制度を存続させるのか、それとも、労働基本権を確立するのか、選択の道は2つに1つしかない」と追及しました。片山総務大臣は、「新しい制度をつくるうえでいろいろな議論がある。私自身は、全体の奉仕者としての公務員に労働基本権回復はどうかと思う」などと私見を述べたうえで、「もう少し議論が深まらなければ結論は出ない」との答弁に逃げました。
 また、春名議員が「政府の『公務員制度改革』は、代償措置としての人事院の機能をなくすのが基本方向だ。使用者である各省大臣の意向で一方的に決められる制度だ。それならば、当然、公務員に労働基本権を回復するしかない」とさらに問いただすと、片山総務大臣は、「同じ公務員の勤務条件がバラバラで、すべて労使交渉で決められるというのは、国民の目から見ておかしい。ある程度自由度があってもいいが、国民に納得できる制度にすべきだ」と答弁し、労働基本権について正面からの議論を避けることに終始しました。
 この後、春名議員は、職業安定所の相談員など非常勤職員の労働条件改善について取り上げ、常勤職員とほとんど同じ勤務をしているにもかかわらず、通勤手当が支給されなかったり、健康診断が実施されていない実態の改善を求めました。この質問に対して、厚生労働省当局からは、「非常勤職員は、委託職員であり、使用従属関係にはないが、必要な予算の範囲のなかで、健康診断などの改善に努力する方向で検討する」との答弁を引き出しました。

 

地域ごとの公務員給給与がどうあるべきか勉強したい

 

 最後の質問者の社民党・重野安正議員は、2001年人勧で人事院が報告した「公務員給与水準の在り方の検討」にかかわって質問し、「公務員賃金の引き下げが民間賃金の低下につながり、悪しき下方循環となっている。地域の賃金実態把握や配分の在り方検討は、軽々にあつかうべき問題ではなく、慎重のうえに慎重を重ねるべき」とのべました。中島人事院総裁は、「地域によっては、民間より公務員が賃金高いという声が、国会議員のみなさんからも出ている。地域の民間の給与実態を正確に把握できているのか調査してみたい。また、民間でも地域別給与が議論されているが、地域ごとの公務員給与がどうあるべきなのかを勉強してみたい」とのべましたが、重野議員は、「地域の実態反映となれば、国家公務員だけでなく地方公務員にも影響する。地方人事委員会制度の否定につながりかねない。総務大臣として慎重に対応すべきではないか」と政府に答弁を求めました。片山総務大臣は、「地方人事委員会は独立した仕組みであり、あくまでも地方は地方だ。関係は出てくるだろうが、制度としては独立している」と答弁しました。
 この後、重野議員は、「公務員制度改革」にかかわって「労働基本権の検討は避けて通れない」としながら、「基本設計」の問題点などについて政府を追及し、質問を終えました。

 

付帯決議を共産党を除く賛成多数で採択

 

 なお、総務委員会では、与野党5会派が共同提案した「付帯決議」が、共産党を除く賛成多数で採択されました。 

【付帯決議】

 政府及び人事院は、人事院勧告制度が労働基本権制約の代償措置であることにかんがみ、勧告制度を尊重する姿勢を引き続き堅持するとともに、給与勧告機能を十分に発揮させ、公務員の適正な処遇を確保するよう務めること。(以上)

以 上